2013 Fiscal Year Annual Research Report
局所励起・検出ESRを用いたスピン液体状態における長距離スピン伝導の検証
Project/Area Number |
24654100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木俣 基 東京大学, 物性研究所, 助教 (20462517)
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Keywords | 電子スピン共鳴 / スピン流 / 有機薄膜デバイス |
Research Abstract |
本研究では、特異な磁気状態を示す有機磁性体において、本当に長距離に及ぶスピン角運動量の伝搬が存在するのかどうかを検証する事を目的とする。またそれを実現するための局所的な電子スピン共鳴(ESR)を用いた測定手法および測定装置の開発も行う。 まず、測定装置開発については、セミリジッドマイクロ波ケーブルとネットワークアナライザを組み合わせた測定プローブの作成を行い、熱酸化処理したシリコン基盤上に設計した平面マイクロ波導波路と組み合わせる事により、最大14 GHzまでの周波数領域においてマイクロ波の透過を確認した。しかし、現在のところ開発した装置によるESRの検出には至っていない。今後は、より素子構造を微細化し、またマイクロ波の透過率をより詳細に検討する事により局所励起・検出ESRを実現する。 その一方で、常磁性/強磁性接合において、強磁性体をESRによって励起する事によりスピン流を生成する手法(スピンポンピング)にも着目し、ドープされた有機半導体PEDOT:PSSにスピン注入する事に成功した。スピンポンピングは、試料のスピン状態を局所的にマイクロ波によって励起するという点において、本研究で開発する局所励起・検出ESRと深い関わりを持つ。その結果、PEDOT:PSSは室温で100nm程度のスピン拡散長を持つ事を示唆する結果を得ている。この値は単純な金属である銅(室温のスピン拡散長400nm程度)などと比較するとそれほど長い値ではないが、PEDOT:PSSの電気伝導率が銅よりも8-9桁程度小さい事を考慮すると、有機物中に非常に寿命の長いスピン状態が存在する事を示唆しており興味深い結果である。 本研究の成果は、磁性と磁性材料に関する国際会議2013(MMM2013)において口頭発表に選出されると同時に、国内の学会においても報告している。
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