2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24654102
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 憲昭 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30170773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石政 勉 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10135270)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 物性実験 / 準結晶 / 量子相転移 |
Research Abstract |
本研究の主目的であった準結晶の量子臨界現象の発見に成功した。具体的には、Au-Al-Yb準結晶および近似結晶(これらはいずれも研究分担者である石政らによって発見された新物質である)の合成を行い、極低温において比熱および磁化率の測定を行った。その結果、準結晶の磁化率が(0.51という)非通常の臨界指数をもって発散し、電子比熱係数が対数的な発散を示すことを見出した。これは、世界で初めての発見である。 一方、近似結晶は磁化率も電子比熱係数も発散を示さず、極低温で通常のフェルミ液体挙動を示した。さらに高圧下で実験を行い、準結晶における上記発散現象(量子臨界現象)が加圧に対してロバストであることを示した。 これらは以下のような意義を持つ。まず第1に、準結晶特有の現象として「臨界状態」の存在が理論的には指摘されていたが、実験的には未だ報告例がない。我々の上記結果は、この臨界状態を捉えた可能性が高い。第2に、上記量子臨界現象の臨界指数は、ある種の結晶(Yb系重い電子系物質)でも見出されている。(理論的には価数揺動モデルが提唱されるなど、現在のトピックスとなっている。)我々の発見は、これまで誰も予想だにしなかった「準結晶と結晶との融合」の可能性を示すものであると同時に、準結晶と結晶の境界領域に新しい研究分野が拡がっている可能性を示すものでもある。 なお、これらの成果は、いずれも質的に新しいものであり、インパクトファクターが高いことで知られるNature Materialsに掲載された。また、中日新聞および朝日新聞で報道された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった「準結晶における量子臨界現象」の発見に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
(現在既に進行中であるが)新たな準結晶あるいは近似結晶の探索を行う。これまで既にAu-Al-Tm系の準結晶・近似結晶を見出しており、今後も継続してこれを行う。また、新奇物性の発現を目指し、極低温における計測を行う。これまでに既に興味ある現象を見出しており、現在はその追試を行っているところである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費(共同研究のための旅費、および成果発表のための旅費)と、準結晶および近似結晶を作成するための原材料費に用いる予定である。
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Research Products
(6 results)