2012 Fiscal Year Research-status Report
固体中の化学結合の生成と切断を利用した格子コラプス型アクチュエータの創製
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24654106
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野原 実 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70272531)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アクチュエータ / 鉄系超伝導体 |
Research Abstract |
CaFe2As2を基本組成とする化合物において、室温で格子コラプス転移を起こす大型単結晶試料の育成に取り組んだ。その結果、LaとRuのコドーピング、すなわちLaをCaサイトに、RuをFeサイトに同時にドープすることにより、格子コラプス転移が室温付近で生じることが明らかになった。 CaFe2As2にRuをドープすると温度100K付近で格子コラプス転移を示すようになり、ドープと共に転移温度が上昇した。しかし、Ruの最大ドープ量である固溶限界においても転移温度は200Kで、室温に到達することはなかった。本研究の発見のひとつは、これにLaをコドーピングするとRuの固溶量が増加し、格子コラプス転移が200Kを超えて室温まで上昇したことにある。この事は、格子コラプス転移による結晶の巨大収縮を利用したアクチュエータ動作が、室温という実用温度で可能になった事を意味する。さらに、Ruがミネラライザとしても働き、Ru添加により大型結晶の育成が可能になった。格子コラプス転移によって結晶が伸縮するc軸方向の厚さが0.1mmを超える単結晶試料の育成成功は、今後の格子伸縮の観察、アクチュエータ動作の確認への大きな前進と言える。 また、Ru以外の様々な化学種のドーピングが格子コラプス転移に与える効果を調べた。その中から、副産物として、45Kという非常に高い臨界温度を持つ超伝導体が見つかった。すなわち、LaとPをコドーピングしたCaFe2As2である。これはCaFe2As2と同じ結晶構造を持つ鉄系超伝導体の転移温度の最高値38Kを5年ぶりに更新するものでる。ここでも格子コラプス転移が関係しているようであり、さらに研究開発を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の4項目の内、2項目を達成した。また45Kの超伝導発見という予想外の成果が得られた。このように、研究はおおむね順調に進展していると言える。 研究項目1は、室温におけるアクチュエータ動作の実証に必須となる室温で格子コラプス転移を示す単結晶試料の育成であり、LaとRuをコドープしたCaFe2As2において達成できた。項目2は、レーザー変位計による結晶の伸縮確認であるが、経費と簡便さから、X線回折実験を次年度行うことにした。項目3は光励起によるアクチュエータ動作の実証であり、現在、実験の準備を進めている。4項目は、磁場によるアクチュエータ動作を狙った強磁性を示す物質の開発であり、PdをドープしたCaFe2As2を開発できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 室温で格子コラプス転移を示したLa-RuコドーピングCaFe2As2において、放射光x線回折法によりc軸の格子巨大伸縮の確認を行う。 (2) 単結晶試料を用いて「てこ」型アクチュエータをつくり、温度変化で生じる格子コラプス転移を利用したアクチュエータ動作の実証試験を行う。この動作を用いたマイクロスイッチを試作する。 (3) 光照射によるアクチュエータ動作を試みる。 (4) 光電子分光実験により格子コラプス転移の電子論的機構を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高額となるレーザー変位計の購入を見合わせたために当該経費が生じた。 この経費は、レーザー変位計よりも簡単に、しかも容易に高精度のデータを取得することができる放射光x線回折実験の実験費用(寒剤費、キャピラリーなどの消耗品費)として有効に使用したい。
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