2013 Fiscal Year Annual Research Report
有機導体で実現する相対論的電子系の電子状態と出現機構
Project/Area Number |
24654111
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
西尾 豊 東邦大学, 理学部, 教授 (20172629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田嶋 尚也 東邦大学, 理学部, 准教授 (40316930)
梶田 晃示 東邦大学, 理学部, 名誉教授 (50011739)
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Keywords | ゼロギャップ伝導体 / ディラック点 / 熱起電力 / 電子構造 / 電荷秩序転移 / ホール効果 |
Research Abstract |
現在唯一バルクな物質で実現しているゼロギャップ状態の電子構造を評価するため、本研究では有機伝導体であるalpha-ET2I3試料の圧力下での熱起電力測定を行った。低圧領域の測定結果と無加圧の測定から報告されているデータを比較し、測定システムが圧力媒体中でも定量的に信頼のおけるデーターが得られることを確認した。その後、1.0 GPa以下の低圧側で観測される電荷秩序の形成により電子のフェルミ準位の状態密度の消失を確認した。圧力の上昇に伴って転移温度の低下が観測された。1.3 GPa以上の高圧領域では低圧側でみられる電荷秩序形成による熱起電力の急激な現象は全くなくなり、100K以下の温度で緩やかに減少し、10 K近傍で符号反転するゼロギャップ状態に特徴的な温度変化が観測された。 この温度変化をボルツマン方程式に立ち戻るとともに、化学ポテンシャルの温度依存性を積極的に利用し、ディラック点近傍の電子状態を定量的分析可能であることを明らかにした。この結果、今まで不明であったディラック点の電子の分散関係が理論的に期待されてきた線形のものより、ディラック点近傍(2 meV以内)で少し変更されることを見出した。また磁場印加により、ランダウ準位の形成によりできたゼロモードの準位の起因する大きなゼーベック係数を発見した。この係数を導く際に磁場の反転に対して反転するネルンスト効果がゼーベック係数以上に大きいことを合わせて見つけている。これらの効果は通常の金属の電子状態で期待される現象とは大きく異なっており、ゼロギャップ伝導体に最も特徴的な量子効果であると考えられる。 このように今まで不明であったゼロギャップ状態のディラック点近傍の電子構造と電荷秩序からの移行が明らかとなった。
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Research Products
(8 results)