2012 Fiscal Year Research-status Report
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24654118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 真人 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90233345)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分光学 / コンピューティクス / スペクトル分解 / ベイズ推論 / モデル選択 |
Research Abstract |
本研究では,ベイズ推論にもとづき,多峰性スペクトルを単峰性の基底関数の線形和に分解するスペクトル分解のベイズ理論を提案し,基底関数の数をデータのみから推定する理論的枠組みを提案することが目的である.この目的を達成するために,平成24年度は以下の三つのテーマを遂行した. (1) MoS2のXPSによるモデル選択の有効性の実証:X線光電子放出スペクトル(XPS)の標準試料のMoS2のS原子の2p1/2と2p3/2の二ピーク構造の分離を試みる.結晶の状態が悪い粉末試料のMoS2のXPSでは,目視でのピーク分離が難しい.この粉末試料のXPSに,スペクトル分解のベイズ理論を適用し,ピーク構造が埋もれたスペクトルの分離を行いモデル選択の有効性を実証した. (2) 光電子数が少ない場合への適用:時間分解XPSでは質の高いスペクトルを得るには,時間解像度を下げざるを得ない.この周波数解像度と時間解像度のトレードオフのため,どの程度の測定時間で,どれだけ物理量が抽出できるかの設計指針が必要となる.時間窓を十分大きくすると,光電子数が十分多い極限に対応し,ノイズは中心極限定理によりガウス分布で近似できる.ここから光電子数を減らしていくと,光電子の離散性によるS/N比の低下が起こり,目視での多峰性の観測が困難となる.この状況を克服するために,ベイズ推論を用いて光電子数の離散性をポアソン分布で取り込み,多峰性スペクトルの抽出と同時にノイズも推定する自動S/N分離のベイズ理論を構築した.この枠組みでは,計算機上であらかじめシミュレーションを行い,どのレベルまで光電子数を減らせるかを予測し,最適な観測時間幅の設計ができることを示した. (3) バックグラウンド(BG)からの情報抽出:BGから非弾性散乱の断面積などの非弾性散乱を記述する物理量の推定を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では平成25年度に実施するはずであった,スペクトルのバックグラウンドからの情報抽出に関する研究まで平成24年度に実施できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初の計画以上に進展しているので,当初予定していなかった二次元以上の空間でのスペクトル分解を追加して研究を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費の主なものは,成果報告を平成25年度に行うことにしたために生じた.この当該研究費を平成25年度の研究費とあわせることで,研究の実施と最終年度に向けた成果報告を行う.
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