2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654120
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田代 徹 お茶の水女子大学, 理学部, 学部教育研究協力員 (80436724)
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Keywords | 自己重力系 / 準平衡状態 / 力学平衡 / 球状星団 / 星間ガスのフィラメント構造 |
Research Abstract |
今年度の研究は先ず,昨年度で充分に行えなかった2次元自己重力系の数値計算からスタートした.初期条件はポリトロープ指数nのポリトロープ解として,nや初期ビリアル比を様々かえて,自己重力系の構造進化を追った.その結果,以下のことが明らかになった.1)初期ビリアル比が0の場合,密度分布がコアを持ち,その外側でベキ的な振る舞いをすることがわかった.更にこの密度分布は,nに依存せず普遍的であることが明らかになった.2)その普遍的密度分布は,星間ガスのフィラメント構造(重力相互作用は円筒対称性より実効的に2次元)で観測されるそれと,ベキ指数を含めて同一であることがわかった. 我々の先行研究によると,3次元自己重力系において,初期条件をビリアル比が0のPlummer解(n=5の3次元ポリトロープ解)にすると,その密度分布がやはりコアを持ち,外側でベキ的振る舞いをし(ただしベキ指数は2次元とは異なる),その分布は球状星団のものと同一であることがわかっている.つまり実際の観測結果と整合性を保って,2,3次元にわたる普遍的な密度分布を,数値計算で得ることが出来た. 次に「研究目的」に掲げた,次元に依らない自己重力系の統一的記述を目指し,2次元で重力版Langevin方程式を構築し,それに対応するFokker-Planck方程式の定常解を求めた.するとその結果は,先に述べた普遍的な構造とベキ指数も含めて整合性をもつことが明らかになった.これはつまり,2,3次元での自己重力系の普遍的な密度分布が一つの現象論的理論で記述できたことになり,本研究の大きな目標が一つ達成できたことを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元自己重力系において,3次元と同様な密度分布が,数値計算を通じて実際の観測結果と整合性を保った形で得られている.さらにその結果を,「研究の目的」に掲げた重力版Langevin方程式を使って導出することに成功した.以上を考慮すれば,25年年度の達成度は順調に進展していると判断して良いであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
先ず,3次元自己重力系の数値計算に関して,現時点では初期条件をPlummer解,すなわちn=5のポリトロープ解とした結果のみがあるので,2次元自己重力系と同じように,他のnでも普遍的な密度分布「コア+ベキ的振る舞い」が得られることを確認する. 次に,重力版Langevin方程式を次の様に改良する:1)普遍的な密度分布にある有限の半径を記述できるようにする.2)初期ビリアル比が0以外の,例えば系全体が完全に力学平衡にある状態を記述できるようにする.2)に関しては,単純に現象論的にLangevin方程式を改良するだけではなく,24年度に得られた新たな描像―ポテンシャル項を含んだ拡張した静水圧平衡―をもとにして行う. さらに時間の許す限り,球状星団や星間ガスのフィラメント構造の発生シナリオを議論する.
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