2013 Fiscal Year Research-status Report
スピン格子模型における厳密解と数値解析の生物系への応用
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24654121
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
南 和彦 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (40271530)
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Keywords | 可解格子模型 / 生物の数理モデル |
Research Abstract |
スピン1/2の1次元transverse Ising模型は磁性体の模型として基本的であり、自由エネルギー, 量子帯磁率(transverse 帯磁率)等が厳密に得られている。この模型は細胞選別の数理モデルとも見なせる2次元Ising模型と、伝送行列とハミルトニアンが可換であるという意味で等価であり、また粒子の移動と生成消滅を含む1次元系であるとも見なせる。平成24年度は、ランダムな相互作用を持ちスピンの大きさがSと1/2で交替する1次元transverse Ising 模型の零磁場の量子帯磁率を一般の確率分布について計算し, 帯磁率の積分表示と高温展開の厳密な表式を求めた。高温展開はスピンが1/2の場合には無限次まで完全に得られている。展開の0次の項は既に知られている一様な場合の解を与え、低次の項は量子帯磁率に対するランダム性の主要な効果を示す。Sを無限大にする古典極限も得られる。ほとんどのパラメータの値に対しては帯磁率は予想された規則的な振る舞いを示すが、弱い相互作用が小さな確率で現れる場合には、帯磁率が非常に不規則な曲線を描くことがわかった。この結果については磁性物質による実験が進行中である。 コンタクトプロセスは病気の伝播の数理モデルであり、2種粒子のコンタクトプロセスは2種の病気が互いに競合しながら伝播する状況を扱っている。博士課程の学生とともに、このモデルの相関等式を書き下し、いかなる条件の下で2種の共存が生じるのかを調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模型に関する厳密な結果を得ることは通常は難しく、それぞれの個別な量に対する個別な結果が報告されることが多いが、24年度に得られた結果は、ランダムな相互作用の(モーメントが発散しない)任意の確率分布に対する熱力学量を厳密に導いたものであり、一般的な結論である。これは生物系の数理モデルとしては、ランダム性を含み粒子の移動と生成消滅のある1次元系についてのゆらぎの計算であると見なすことができる。 コンタクトプロセスの2種粒子の共存については、まず相関等式の一般系を書き下し、d次元格子とtreeについてpair近似を用いて解析し、適当な条件の下で2粒子の(2種類の病気の)共存が起きることを導いた。
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Strategy for Future Research Activity |
1次元Ising模型はparallelおよびtransverseの磁場の下で自由エネルギーが厳密に得られている。スピンが1/2の場合については、スピン演算子の特殊性から、演算子の高次の項が定次の項に一致し、一般に演算子による展開が有限になる。この条件の下で、より一般的な結果が得られることを期待している。 コンタクトプロセスの2種粒子の共存については、まずd次元格子とtreeについて解析したが、これらについては既に他の方法によって調べられており、異なる格子上での相図の解析が次に望まれる。得られた相関等式は一般的であるので、pair近似を使うのであればこれはそれほど難しくない。具体的な生物系への応用が次に期待される。 格子模型での解析手法を生物系に応用する際には、数値計算による解析が強力でああるが、いまのところその知識を持った研究協力者がみつからない。厳密な結果を核とし、近似的な手法で定性的に議論しながら、これらでは解析できない領域を数値的に調べたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究進行上の理由およびスケジュール的な問題から海外における成果発表ができなかった。 最終年度には既に研究計画として申請してある内容の他に、有効な形での成果発表の機会を加える。
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Research Products
(5 results)