2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24654136
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石渡 信吾 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (10223041)
|
Keywords | 確率共鳴 / 聴覚 / 蝸牛管 / 有毛細胞 / 閾値応答 / ノイズ / 自励振動 / 人口蝸牛 |
Research Abstract |
聴覚における蝸牛管の役割は音波の周波数分解である。内耳に達した音波は蝸牛管内の基底膜を振動させる。基底膜は長さ方向に異なる固有振動数を有し、音波の周波数に応じて特定の場所が振動する。基底膜上に並んだ有毛細胞が場所ごとに異なる周波数成分を検出する。人では3個の外有毛細胞と1個の内有毛細胞を1組として、3500組ほどが基底膜上を約10μm間隔で並ぶ。基底膜の振動は1Å以下とされ、外有毛細胞はこの振動に応答して伸縮し振動を増幅させ、内有毛細胞がこれを検出して蝸牛神経へ伝えると考えられてきた。人の可聴域は20Hz-20kHzで、周波数分解能は0.2%程度である。しかし従来のモデルでは、現実の検出感度と周波数分解能を説明できない。本研究は確率共鳴の観点から、生理学的構造に基づいて各機能を推定し、高感度・高分解能の検出能力を実現し得るモデルを提案した。 人では2kHz前後で蝸牛神経の応答が異なる。これを踏まえ、低音領域では通常の確率共鳴を、高音領域ではさらに引き込み現象を導入する。各外有毛細胞に対して順に異なる自励振動数を与え、閾値を高音側に向けて次第に下げ、高音域ではノイズだけで自励振動に近い振動状態をつくり出す。ここに自励振動数に等しい基底膜振動が加わると、引き込みが起こり、位相の揃った極めて高いS/N比の検出が可能となる。次に3つの外有毛細胞が同時に発火したときにのみ内有毛細胞が応答するという同時応答性の仮定を設けて、周波数選択性の向上を実現した。これにより基底膜振動のみの周波数分解能を大幅に向上させることができ、1%の分解能を得た。さらに内有毛細胞の積分応答を閾値の異なる10本の蝸牛神経でノイズ応答させることで強度分解を可能にした。これらを電気回路で構成し検証した。本研究は確率共鳴を通して、感覚器におけるノイズの積極的役割を提示すると共に、回路での実現は人口蝸牛への道を開く。
|
Research Products
(2 results)