2012 Fiscal Year Research-status Report
DNAナノ構造体を用いた筋肉再構成系の機能的デザインと内部状態イメージング
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24654139
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩城 光宏 独立行政法人理化学研究所, 細胞動態計測研究グループ, 上級研究員 (30432503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノバイオロボティクス / 自己組織化 / DNAorigami / 1分子計測 / メカノバイオロジー / 生体ナノモーター / 環境応答 |
Research Abstract |
本研究では、1分子計測技術とDNAorigami技術の融合によって、モーター分子集合体の空間的デザインと内部運動計測の技術基盤を創るのが目的である。本年度では、筋肉収縮を担うモーター蛋白質であるミオシン分子の空間配置と個数を制御するDNAorigamiテンプレートの設計と作製および精製を行った。 天然の筋肉では、14.3 nm間隔(同じ配向を持った分子は42.9 nm間隔)でミオシンモーター部位が配置されている。理論的な粗視化モデルでは、空間周期に依存して筋肉の収縮速度や筋肉に加えられる負荷に対する収縮速度の応答が変化し、いくつかの周期に対して共鳴的に収縮速度が増加もしくは減少する結果が得られている。モーターシステムの機能や効率化に対する空間周期の役割を実験的に検証するために、本年度に作成したDNAorigamiテンプレートにおいては、14.3 ±1 nmの間隔でモーター分子を配置することが可能な結合部位を設計した。この設計により、天然の筋肉で同一のアクチンフィラメントに相互作用可能なミオシン分子の間隔である42.9 nm周期のモーター集合体を始め、周期をずらした人工的な筋肉構造の作製を行うことが可能になった。実際に作製したサンプルをアガロース電気泳動し、バンドのパターンから均一な構造物が得られていることが示唆された。また、ネガティブ染色による電子顕微鏡観察によって、実際にテンプレートが作成されていることが確認できた。 次年度においては、モーター分子を結合させて様々な集合体を作成し、アクチンフィラメント上でのすべり運動観察を行い運動速度の解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度では、モーター分子集合体の空間配置と個数を制御するDNAorigamiテンプレートの設計を行うのが目的であった。研究実績にもあるように、天然の筋肉で観察されている空間配置を始め、そこから14.3nm単位で空間周期をずらした形で配置可能なテンプレートの設計ができ、かつ、実際に作製することができた。次年度に向けた準備も進めており、おおむね計画通り順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度では、昨年度までに作成したモーター分子集合体用のテンプレートを用いて、実際にモーター分子の配置を行う。筋肉のミオシンとDNAorigamiを結合させるために、ミオシン軽鎖にSNAP-tagを付加したコンストラクトを作成する。SNAP-tagに20base程度のオリゴヌクレオチドを結合させて、テンプレートのデザインされた位置に配置した1本鎖DNAとハイブリダイズさせることによって、両者を安定に結合させる。SDS-pageによる確認と、電子顕微鏡もしくはAFM観察によって実際に作製された集合体の完成度を評価する。 平行して、1分子イメージングのための光学設計を調整し、集合体のすべり速度や力発生、集合体の内部状態を捉えれるようにする。テンプレートの長さが400 nm程度であり、この領域内に同じ蛍光波長を持った複数の蛍光プローブが存在すると1分子解析を行うことが出来たないため、2-4色程度の蛍光プローブが結合できるように設計する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ミオシン軽鎖コンストラクト用のプラスミドと発現精製系に用いる試薬の購入を行う。このコンストラクトに付加する合成オリゴDNAや、SNAP-tagに結合させるための基質(ベンジルグアニン)の購入も進める。実験に合わせてDNAorigamiのテンプレートのマイナーチェンジ用に材料となる1本鎖DNAや合成オリゴDNAも購入する。作製した集合体の確認用として生化学試薬や、電子顕微鏡観察、AFM観察で必要な消耗品(染色試薬、グリッド、カンチレバーなど)の購入も行う。 1分子計測で用いる自作の蛍光顕微鏡のマイナーチェンジも必要であるため、実験に合わせて適切な光学フィルタやレーザーの購入を行う。 その他、情報収集や成果発表のための旅費、解析用のハードウェアやソフトウェア関係の購入も予定している。
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