2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24654143
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 俊哉 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40272463)
|
Keywords | 係留気球 / 火山噴煙 / 火山ガス |
Research Abstract |
本研究課題では、火山噴煙観測用に係留気球を用いた手法の開発を目指している。係留気球で使用するための観測装置は、できるだけ軽量であることが望まれる。ガスセンサー自体の軽量化は難しいため、センサーやポンプを駆動する電源部分の軽量化をおこなった。また、火山ガスの濃度測定に使用する二酸化硫黄と硫化水素ガスセンサーおよび電動ポンプを実際に観測で使用するセットアップで、キャリブレーションやレスポンスの確認を行った。 昨年度から続いていた、ヘリウムガスの供給不足が緩和され、入手可能になったので、3月9日から10日の日程で阿蘇火山において試験観測を実施した。3月9日は晴れであったが雲が次第におおくなり、観測を実施した11時から13時過ぎの後半の時間帯にはわずかだが雪もちらついていた。また、山頂付近では風が比較的強く、時折強く吹く風は10m/sを超えていたと思われる。測定は山頂火口の南側リム付近で実施した。この日は、噴煙は南東方向に流れていて、時折、火口の南側リム上空を流れることがあった。このため、地上でも二酸化硫黄臭がすることがあった。この日の測定では、強風のため最大で25m程度しか上げることができなかったが、何度か上げ下げを繰返し、二酸化硫黄と硫化水素センサーのレスポンスを見た。その結果、気球が上空にあるときに、地上レベルより6-10倍高いガス濃度が観測される事例が見られた。この結果は係留気球を用いた観測の有効性を示していると考えている。 現在使用している定電位電解式センサーはレスポンスが十数秒から数十秒と遅いので、応答速度を上げるため小型分光計を用いた装置設計の検討に入った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度からの世界的なヘリウムガスの供給不足は年度途中でようやく緩和され、係留気球を用いた測定が可能となったが、この影響でヘリウムの調達ができなかった期間が長く、研究全体としては遅れた状況になってしまった。このため、研究計画を1年延長し、平成26年度も実施することで、本研究の目的を達成する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の阿蘇火山での試験的な観測により、係留気球を使用した火山噴煙観測の有効性を示すことができたので、さらに試験観測を重ねる予定である。特に、当初から目的としている桜島火山、及び、昨年度実施した阿蘇火山での観測を念頭においている。昨年度の阿蘇火山の測定では強風のため、高度を稼ぐことができなかったが、更なる高高度での測定を目指すよていである。また、噴煙の異なる部分(上下水平方向)での火山ガス組成に着目した観測なども検討し、噴煙内の均一性・非均一性をあきらかにしたいと思っている。 測定装置についても、昨年度使用した定電位電解式タイプのガスセンサーの使用だけでなく、より応答速度の速い、光学的センサーの導入しした測定なども実施する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行するうえで要であるヘリウムガスの世界的な需要の拡大と供給の不足により、平成24年度から平成25年度前半にかけて、観測に使用するためのヘリウムの調達ができなかったため、係留気球による火山ガスの観測を予定通り実施することができなかった。このため、計画を変更し、ヘリウムの調達が可能となった平成25年度後半以降に観測を行うことにしたため、次年度使用額が生じてしまった。 観測用のヘリウムの調達が比較的容易になり観測ができるようになったので、使用計画としては、今年度に実施できなかった観測を実施するための旅費や消耗品に使用する。 消耗品としては、観測に使用するヘリウム、ゾンデ式の気球、係留用のラインのほか、係留地上部機材の整備を行う予定である。また、分光計を用いた測定に関連した光学部品なども検討している。旅費としては、阿蘇火山、桜島火山への観測旅費および研究打合せ旅費が中心となる。また、研究成果の発表のためのワークショップ参加旅費としても使用する予定である。その他の経費としては、観測機材の運搬費や観測の際に使用するレンタカー代金として使用する。
|