2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654150
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40376538)
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Keywords | 気候変動 / 予測可能性 / 大気海洋結合モデル / 大西洋熱帯域 |
Research Abstract |
現在の大気海洋結合モデルは、平均場の再現性に問題(観測では、東大西洋赤道域の方が、西大西洋赤道域の方よりも海面水温が低いが、ほとんどの大気海洋結合モデルで西大西洋赤道域の方が、海面水温が低くなってしまっている。本研究で使用しているモデルでは、海面水温の東西傾度の符号は再現できているものの、大きさは観測データに比べると小さい。)を抱えている。予測精度を向上させるためには、大気海洋結合モデルの改良が不可欠であると考えられるので、モデルを改善するための研究を行う。具体的には、大気海洋結合モデル(UTCM)では、3種類の積雲対流パラメタリゼーション(Kuo 1974; Tiedtke 1989; Emanuel 1991)が使用できるため、この3種類のパラメタリゼーションでそれぞれモデルを80年間積分し、混合層熱収支解析を行った。その結果、海面熱フラックスのバイアスが、東大西洋に正の海面水温バイアスに最も寄与していることが示唆された。 また、本研究で採用している海面水温を観測データに強く緩和させて初期化する手法は、太平洋で大きな成功を収めてきているが、大西洋で成功するかどうかはわからない。そこで、各海盆で海洋の温度構造がどの程度良く再現されているかを観測データとの比較により調べた。その結果、太平洋熱帯域では、多くの海域で相関係数が0.7を超えており、本研究で採用している手法により、上層300mの蓄熱量偏差は、よく初期化されていることがわかった。それに対し、インド洋・大西洋熱帯域では、ほとんどの海域で相関係数が0.5以下で、負の海域も存在しており、初期化にも問題があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の予定していた研究に加え、一部、平成26年度に予定していた研究も行うことができたため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
予測精度を向上させるためには、初期値データの精度の向上が不可欠であると考えられる。平成25年度の研究により、海面水温を観測データに強く緩和させて初期化する手法は、太平洋以外では問題があることが判明したが、その理由が明らかになっていない。そこで、平成26年度の研究では、その理由を調べることにする。具体的には、海面水温と外向き長波放射の関係がモデル内で再現できているかどうかを調べる(赤道上に正の海面水温偏差があると、直上で対流活動が活発化し、そこに表層風が収束することによって、上層の蓄熱量偏差が形成される。一方、遠方からの影響等で、赤道上で対流活動が抑制されると、正の海面水温偏差を形成すると同時に、表層風が発散し、逆符号の蓄熱量偏差を形成することになる。したがって、同じ海面水温偏差が存在しても、形成される上層の蓄熱量偏差が逆符号になることもある。)。本研究で採用している手法は、モデル内で海面水温と外向き長波放射の関係が再現されていることを前提としているので、このような視点からの解析を行うこととする。また、初期値データの精度の向上のため、海盆によって海面水温を観測データに緩和する時間スケールを変更した追加実験も行い、違いを調べることにする。 平成26年度は最終年度となるので、研究成果をまとめ、国際誌に論文を投稿すると同時に、国内外の学会で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文掲載費として使用する予定だったが、出版社から請求書が届くのが遅れ、次年度使用額が生じた。 論文掲載費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)