2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654159
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 努 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50321972)
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Keywords | 鍾乳石 / 津波履歴 |
Research Abstract |
2011年3月の東日本太平洋沖地震津波以来、歴史津波に関する関心が高まっている。869年に起きた貞観地震津波などの歴史津波の研究は東日本太平洋沖地震津波以前から行われていたが、これら歴史津波の存在は陸上に残されている津波堆積物の調査や古文書の記述によって明らかにされてきた。このような従来の手法では、津波堆積物が後世の人的な土地改変などで失われてしまえば津波履歴を認定することができなくなる。しかし、沿岸部で過去数百~数千年間ほぼ連続的に成長し、幾度となく津波の影響を受けた鍾乳石には成長様式や化学成分の変化として津波履歴が消去されずに残されていることが期待されるとともに、それらの年代も特定可能である。本研究の目的は、宮城県気仙沼地域を中心とした東北地方太平洋沿岸部の鍾乳石を用いて過去数千年間の津波履歴を明らかにすることである。 1年目(平成24年度)には、気仙沼市神明崎の洞穴群および周辺域の洞穴について、各洞穴の洞口標高のオートレベルによる測量や洞内への3.11津波の流入の有無および影響についての調査を実施し、いくつかの洞穴からは鍾乳石も採取した。2年目(平成25年度)には、各洞穴内の測量調査(採取した鍾乳石の標高を含む)を行い、さらに1年目に実施できなかった管弦窟内の測量調査と鍾乳石の採取を行った。また、管弦窟では多量の化石(イノシシやシカの骨など)を含む堆積物を発見した。この堆積物の形成年代は、鍾乳石の形成年代とも密接に関係することから、骨の年代測定を試みたがうまくいかなかった。各洞穴で採取した鍾乳石に残されていることが期待される津波痕跡については現在分析を進めている。神明崎洞穴群における3.11津波の流入とその痕跡についての研究成果を、学会発表および学術雑誌論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象候補であった9洞穴の事前調査結果に基づき、神明崎の7洞穴を研究対象としそれら洞穴の洞口標高の測量や洞穴内部の測量・記載、津波流入の痕跡調査と調査を行うとともに、鍾乳石を採取した。その結果、当初の予想通り、洞口標高が0-5.4mの5つの洞穴内にはがれきの流入や泥の堆積など津波流入の痕跡が認められ、一方洞口標高が8.6mと9.8mの2洞穴には津波流入の影響がないことを確認できた。地権者の許可を得て、これらの洞穴の一部では鍾乳石を採取してそれら鍾乳石を観察したが、管弦窟で採取した一部の鍾乳石を除く他の鍾乳石の表面には泥などが付着しているというような一目瞭然の津波流入の痕跡は認められなかった。そこで、現在、顕微鏡や電子顕微鏡による表面観察や海水化学成分の付着等の視点から、津波流入の痕跡がこれらの鍾乳石に残されているか、残されている場合にはどのようなものであるか、を分析・検討している。研究成果の一部である神明崎洞穴群における3.11津波の流入とその痕跡についての結果を、学会発表および学術雑誌論文として公表した。前年度には一部の洞穴で鍾乳石採取ができなかったなどの当初計画からの遅れがあったが,今年度はおおむね順調に研究遂行ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は、採取した鍾乳石の分析を進め、鍾乳石に記録された「津波の痕跡」の特定作業を進め、最終的な結論を得たい。さらに、採取した鍾乳石のより過去に成長した部分について「津波の痕跡」の有無を明らかにするや時間軸を設定するために詳細な年縞の観察・分析やウラン系列年代測定も進める。また、管弦窟内で発見された獣骨を多量に含む化石層の形成年代は、管弦窟内の鍾乳石の形成開始年代とも密接に関係するため、含まれる化石の年代決定を再度試みる。 前年度までに引き続き、津波堆積物などによる津波履歴の復元結果に関する情報も収集し、鍾乳石による過去数千年間における津波履歴(津波の襲来時期および気仙沼周辺域における浸水深)を明らかにしたい。上述のように、研究成果の一部はすでに学会発表や学術論文として公表したが、今後も本研究で得られた研究成果は、随時、関係学会や学術雑誌等で広く公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことおよび当初必要と考えていた重機使用(洞口をふさいでいる岩塊の除去のため)が不必要となったために発生した未使用額である。 上記の通り研究を効率的に推進したため生じた次年度使用額は、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)