2012 Fiscal Year Research-status Report
原始生命体を支える含水アモルファスシリカーアミノ酸複合体の合成
Project/Area Number |
24654172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
奥野 正幸 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40183032)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生命原料 / 含水アモルファスシリカ / アミノ酸 / 高圧力実験 / 構造変化 / ラマン分光法 / 赤外分光法 / X線回折法 |
Research Abstract |
平成24年度は、含水アモルファスシリカ―アミノ酸複合体の合成ならびにその衝撃圧縮実験を行い、その構造変化とアミノ酸の安定性について以下のような成果を得た。 1) 基礎的な情報を得るため、シリカゲル単独での高圧力下での構造変化を明らかにした。まず、シリカゲルを合成し、マルチアンビル高圧装置を用いて、5GPa、10GPaの圧力で圧縮し、その構造変化などをX線回折、ラマン分光法及びNMR測定の結果から調べた。その結果、シリカゲルは5GPa、10GPaでの圧縮で含水量が減少するとともにSiO4四面体のネットワーク構造の切断ならびにSi-O-Si結合角の減少など不可逆な構造変化が起る事を明らかにした。また、100℃・5GPaの圧縮では、シリカゲルは水の存在により低温での圧縮でコーサイトに相変化することを見出した。 2) さらに、合成シリカゲルを一段式火薬銃を用いた衝撃圧縮により約30GPaまでの圧力で圧縮し、その構造変化を粉末X線回折測定,赤外吸収測定、ラマン分光測定を行って調べた。その結果、SiO4四面体の4員環を基本構造とするシリカゲルは、衝撃圧縮によりそのSiO4四面体ネットワークが再構成され、6員環などのより大きなリング構造が形成されシリカガラスのような構造に変化することを明らかにした。また、30GPaでの圧縮でも試料内部にはシラノールが残存することを見出した。 3) シリカゲルーアミノ酸(L-セリン)複合体を、ゾルーゲル法を用いて合成した。この複合体を約20GPaまでの衝撃圧力で圧縮し、試料を回収した。回収試料についてラマン分光測定、赤外及び紫外可視分光測定を行った。その結果、L-セリンはシリカゲルと共存する状態で、11GPa以上の圧縮でも分解しないことを明らかにした。 4) これらの結果について、国内外の学会で発表を行い、一部は国際学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度、本研究課題については以下のような理由から、おおむね順調に進展していると判断した。 (1)ゾルーゲル法によりアミノ酸(セリン)を含んだシリカゲルを合成し、その構造をX線回折、紫外可視・赤外・ラマン分光法によって明らかにした。この研究成果については、(2)の研究成果の一部とともに、学会発表により公表した。 (2)さらに、合成したシリカゲルーアミノ酸複合体についての衝撃圧縮実験を実施・成功させ、シリカゲル中でのアミノ酸の安定性と衝撃圧力の関係について明らかにすることができた。この研究についての成果の一部は、学会発表により公表した。 (3)また、上記の研究の基礎となるシリカゲルの静水圧や衝撃圧による圧縮実験を行い、多くの情報を得るとともに、その成果は3件国際会議の抄録として公表されている。また、この研究については現在学術論文として国際誌に投稿中で間もなく受理される見込みである。 (4)主要物品である、紫外・可視分光装置については、順調に稼働している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで研究が順調に進んでいる事から、現時点で平成25年度以降の研究実施計画を大きく変更することなく、研究を進めることができると考えられる。ただし、衝撃圧縮実験については、より精密な情報を引き出すために今後も引き続き継続して実施して行く。それと平行して当初予定していたシリカゲルーアミノ酸複合体の静水圧縮実験を行う予定である。これらの実験研究を順調に進めて行くために、一部他機関の研究者との連携が必要であるが、そのための共同研究のための準備をほぼ完了している。 上記のように,今後の研究について準備できていることから、平成25年度も研究が順調に進展することが期待できる。その結果、研究計画に余裕ができた場合には、現在までの研究について追加の実験を行いその精度を高める。また、既に得られた実験試料についてさらに精密な分析を行う。加えて、積極的に学会発表などを通じて研究成果の公表に務めるとともに、学術論文への投稿準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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