2012 Fiscal Year Research-status Report
X線スペクトルを用いた状態分析による新しいCHIME年代測定の高精度化の試み
Project/Area Number |
24654174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 丈典 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 准教授 (90293688)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | CHIME年代測定 / EPMA / エックス線発光スペクトル / 結晶構造 / 岩石・鉱物・鉱床学 / 国際研究者交流(大韓民国) |
Research Abstract |
花崗岩からジルコン粒子を分離し、電子プローブマイクロアナライザーを用いてX線発光スペクトルを測定した。X線発光スペクトルに関する実験は、名古屋大学年代測定総合研究センターの日本電子株式会社製JCXA-733(ローランド円の半径140 mm)及び研究協力者(韓國地質資源研究院趙騰龍先任研究員等)の協力のもとで釜山国立大学共同実験実習館のカメカ社製SX-100(ローランド円の半径160 mm)を用いて行った。分光結晶はThallium acid phthalate及びPentaerythritolを用いた。加速電圧は15 kVとした。長時間連続測定を行うため、現有のJCXA-733に対し、電子回路の見直し及び温度係数の小さい電子部品を用いるなどの改造をして安定性を向上させた。 X線発光スペクトルの測定結果から、ジルコン粒子内でX線発光スペクトルの形状が異なるドメインが見いだされた。このことは、鉱物粒子内における結晶構造の何らかの変化が検出できている可能性を示唆しており、本研究課題の目的達成における重要な知見である。 名古屋大学のJCXA-733と釜山国立大学のSX-100ではローランド円の半径及び分光器駆動範囲が異なっているため、全く同じ条件での比較は不可能であった。しかし、それぞれの装置において適切な分析条件を設定すれば上述のスペクトルを得られることが明らかになった。 また、JCXA-733では長時間連続測定による電子光学系の汚染がほぼ予想された程度であることが明らかとなった。そのため、当初の予定通り、通常よりも短い間隔で分解清掃を行う必要がある。一方、分光器駆動部分の劣化が想定した範囲を超えており、今後対策を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は結晶構造を反映している可能性のあるX線発光スペクトルを見出すことであったが、名古屋大学および釜山国立大学の電子プローブマイクロアナライザーで粒子内でX線発光スペクトルの形状の異なるドメインを見出すことに成功した。このことは、電子プローブマイクロアナライザーによるX線発光スペクトルの測定により結晶構造の違いを検出できる可能性を示している。 いずれのX線発光スペクトルも、エネルギー範囲を限定すれば現実的な時間で測定可能であると予想され、平成24年度の予定通りの結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本電子株式会社製EPMAとカメカ社製電子プローブマイクロアナライザーを用いて、引き続きX線発光スペクトルの収集を行う。平成24年度の研究で、両社で異なる測定条件を用いる必要があることが明らかになったので、どちらの電子プローブアナライザーでも設定可能な分析条件で測定できるX線スペクトルに着目する。 平成24年度に結晶構造の情報を反映している可能性が示唆されたX線スペクトルをより精密に測定することによって、より高速に測定可能かつ結晶構造の違いに敏感なスペクトルを選定する。 平成24年度の実験により、分光器駆動系の劣化が若干想定を超えることが明らかになった。そこで、当面は部品交換の間隔を短くすることにより対応するが、交付申請時の目標である「現実的な測定時間」かつ「結晶構造の変化をとらえることが可能である」分析条件の最適化をめざすことにより、部品の劣化を最小限にするよう検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有の電子プローブマイクロアナライザーは本研究課題以外の目的でも使用されている。平成24年度末に他の目的で使用されていたため、平成24年度末に予定していた電子光学系の保守が未実施である。 通常の分析であればこのまま使用可能であるが、本研究課題による長時間連続運転には耐えられない状態である。そのため、平成25年度に本経費を用いて保守を実施する。また、分光器駆動系の劣化が当初の予想を超えていたため、当面は本経費を用いて部品交換頻度を通常よりも多くすることにより対応していく。
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