2012 Fiscal Year Research-status Report
隕石の海洋衝突条件下でのキラル化学に基づく生物有機分子進化
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24654176
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関根 利守 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70343829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 善博 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00544107)
小林 敬道 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端プロセスユニット, 主幹研究員 (20260028)
掛川 武 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60250669)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 衝撃実験 / 生命起源物質 |
Research Abstract |
後期重爆期での生命起源物質の生成を模擬する目的で、隕石衝突下での水溶液中のアミノ酸の安定性およびD/L変換に関する衝撃回収実験を行った。衝撃実験はつくば物質・材料研究機構の一段式火薬銃を用いて行った。分析は、東北大学で行った。アミノ酸としてはバリンを主としてD/L変換に関する実験を進めた。DからLへの変換反応とLからDへの変換反応をそれぞれ別個に検討した。共存する固体物質をオリビン粉末、ヘマタイト、およびカルサイの3種について検討した。それぞれは衝突時の酸化状態を変える役割を果たす代表的物質である。その結果、バリンのDからLへの変換反応とLからDへの変換反応とでは差が生じることが明らかになった。これらは単純な熱的反応だとすれば同等のはずで差が生じることはない。今後はさらに実験を繰り返すことで、衝突によるD/L変換の確認を進める。また、衝撃反応だけではなく、共存個体の吸着脱離等の検討もすすめる必要があることが分かった。アラニンについては、共存する個体で回収試料に残る量が大きく変化することから酸化状態がアラニンの安定性に大きな役割を担っていることが明らかになった。しかし、アラニンのD/L変換については、衝撃での変化は認められず、バリンの場合と差があることが判明した。従って、今後は、衝撃条件の変化との関係も調べる必要があり、全体像をつかみ、隕石衝突とアミノ酸のD/L変換の関係に束縛条件が与えられるように実験的検討を進める必要がある。そのためには、衝撃実験で衝突速度が約1km/sを超えるような比較的強い衝撃条件下でも水溶液試料回収が回収できるように、試料容器の開発をすすめることも必要である。引き続き実験的検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験結果は予想されたものと異なり、本実験の意義は大きくなった。実験を繰り返すことで、誤差の考慮が必要であるが、酸化状態や吸着性などの差がアミノ酸のD/L変換に影響があることを示した。繰り返しの隕石の海洋衝突でアミノ酸の生成だけでなく、生物分子進化がさらに進み、アミノ酸のD/L変換についても化学的な環境に依存するが変換が起きることが実証された。アミノ酸の種類でも差が見いだされ、さらに検討を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた実験結果から、今後はさらに実験を繰り返すことで、衝突によるアミノ酸バリンのD/L変換の確認を進める。また、衝撃反応だけではなく、共存固体の吸着脱離等の検討もすすめる必要があることが分かったので、この点についてもカルサイトについては実験を行い、室温付近でのD/L変換の確認について検討したい。確認ができ次第、速やかに実験結果をまとめて公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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