2012 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素及び酸素の二重置換同位体組成解析法の確立
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24654182
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 理 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00293720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 桂太 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70323780)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地球化学 / 同位体 / 二重置換同位体組成 |
Research Abstract |
本研究は、水温既知の環境下で生育された造礁サンゴ骨格を用いた、炭酸塩の炭素・酸素二重置換同位体組成と形成水温の正確な関係式の構築を目的とする。また、これまでほとんど研究例のない、酸素分子の二重置換同位体組成(Δ35・Δ36)の計測法の開発と素過程に伴う、同位体組成と同位体分別を明らかにする。 本年度は以下の項目を実施した。 1)Delta XPによる二酸化炭素の二重置換同位体組成の計測システムの確立 東京工業大学のDelta XP安定同位体比質量分析計を用いた二酸化炭素の二重置換同位体組成の計測システムを確立した。先行研究を行っているすべての研究室ではMAT253型の同位体比質量分析計を用いて計測されており、より小型のDelta XP型で実施した例はなく、本研究が初めての成功例となった。計測精度に関しては、MAT253型とほぼ同等の数値を得ることができた。また、MAT253型で必ずみられる、イオン分子計測の非線形性についてはDelta XPでは認められず、生データの補正を必要としない利点があることがわかった。以上の結果をRapid Communications in Mass Spectrometry誌に投稿し、出版された。 2)与那国島ハマサンゴ骨格炭酸塩の二重置換同位体組成の計測 2001年に琉球列島与那国島沖で採取した、水温既知の環境下で生育した造礁サンゴ(ハマサンゴ)骨格の二重置換同位体組成(Δ47, Δ48, Δ49)を2年分計測した。生育水温とΔ47の直線回帰の相関係数は-0.86と非常に高い結果となり、サンゴ骨格のΔ47が水温復元に十分実用的であることを示すことがわかった。一方で、直線回帰の傾きは先行研究に比べて約3倍大きくなった。この原因は不明であるが、動的同位体効果の影響が考えられる。以上の結果は、2012年6月の古生物学会シンポジウム(名古屋大学)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素の二重置換同位体組成については、計測法の確立を終え、論文として公表することができた。また、サンゴ試料の計測も順調に進んでいる。本年度実施計画で記したパラオサンゴについては未計測であるものの、新たに温度既知の条件下で合成した炭酸塩(アラレ石・方解石)試料を得ることができた。以上より、二酸化炭素については当初の計画以上の進展があった。 酸素の二重置換同位体組成については、本年度で計測法の確立を終える計画であったが、未達成であり、やや遅れているといえる。代表者の実験室が、改修工事のため、2012年9月~2013年4月まで一時的に移転したことにより、使用予定の質量分析計の運転を停止していたことが大きな理由である。5月に再移転したのち、計測法確立を再開する予定である。 以上から総合的にはおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度で記したように、二酸化炭素計測については当初計画以上に進展していると判断できるため、H25年度の前半で実験を一段落させて、論文作成に取り組んでいく。 一方で、H25年度はやや遅れている酸素計測について重点的に取り組んでいく。まずは計測法の確立を行い、順次、計測精度および確度の確認を行う。二酸化炭素計測についてはすでにルーティン化できていることから、酸素分子を12Cグラファイトにより二酸化炭素化する方法についても計画通りに取り組んでいく。培養実験については、当初計画の植物プランクトン培養に加えて、新たに分担者として取り組む造礁サンゴの培養によって得られる試料の計測も実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担者の山田(東工大)に当初配分した研究費が次年度に繰り越しとなっており、これは質量分析計の故障がほとんど生じなかったことが理由である。一度故障が発生すると、場合によっては配分額を超える修理費用がかかることもあるため、繰越金については、本年度と同様に不測の事態のため備蓄しておくことが望ましい。
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Research Products
(5 results)