2012 Fiscal Year Research-status Report
大気圧低温プラズマによる止血機序の解明と内視鏡装置への適用
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24654194
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北野 勝久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20379118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 和弘 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (30286786)
伊藤 雅昭 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (40312144)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / プラズマ医療 / 止血 / 内視鏡 / がん治療 |
Research Abstract |
熱負荷の無い大気圧低温プラズマを用いて、プラズマ医療の一つの応用である止血に関する研究を行っているが、本年度は動物実験を用いた有効性に関する研究を主に進めた。LFプラズマジェットと呼ばれる大気圧プラズマ源をがんセンターに設置し実験を行った。プラズマ源はガス流量ならび電圧を可変にしてある。 類似したプラズマ止血の研究では、マウスの尻尾や大型動物の皮膚からの出血に対して研究が行われているものが多いが、それらのほとんどは生体が兼ね備えている止血機構により自然と止血が行われるために臨床的な価値は少ない。打ち合わせを数多く行い、プラズマならではの研究として、下記の2つをターゲットにすることに決定した。一つは腫瘍切除後の実質臓器の断面からの止血であり、従来はアルゴンプラズマ凝固装置による熱プラズマや電気メスなどにより止血が行われているが、組織に対するダメージが大きいという問題点があった。もう一つは、自然に止血が行われる毛細血管ではなく、止血処置が必要な太い血管からの出血に対する止血である大腿静脈からの出血である。それぞれコントロールとしてヘリウムガスのみの照射実験をしているが、皮膚直下の毛細血管からの出血はこのガス照射のみで止血が進むことが多い。 臓器断面からの出血はプラズマの発光部が直接当たる場合のみに進行することがわかった。凝固に関与する因子としては、電子といった寿命の短い活性種が関わっていることが推察される。病理切片の診断によると細胞はほぼ損傷を受けておらず、止血部においても赤血球が形を保っており、低侵襲な止血が行われていると評価できる。 マウスの場合、大腿静脈を切断すると5分程度で死に至るが、プラズマ照射を工夫することによりに止血が可能であり、照射後にマウスが生存することが統計的に有意な差があることが実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は動物実験による評価を主に進めたが、臨床的にも価値のあるデータを得ることができ、当初の予定を上回り次年度分の内容に関わるところまで研究を進めることが出来た。特に実験を行う前に十分な打ち合わせを行ったことで、臨床的に必要とされる止血技術のニーズをピックアップできたことで、実用化へ向けた効率の良い基礎研究を進めることが可能となった。また、絆創膏でも可能な止血ではなく、内視鏡手術時への適用を前提に研究を進めており、これまでに内視鏡の鉗子口から挿入可能なプローブ(別の熱プラズマ用として医療機器認証済み)を用いて、大気圧低温プラズマを照射可能な装置の製作も行っている。プラズマ止血において血餅が形成されたことから、単なる熱変性凝固ではなく、プラズマにより生成されたなんらかの活性種による生化学的な作用であることが推察されたが、この素過程を検証するために、液中へ供給されて活性種の診断を電子スピン共鳴法、質量分析法、液体クロマトグラフ法などにより診断を進めることで、反応素過程に関してさらなる知見を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き動物実験により止血の評価を進める予定である。しかしながらプラズマ止血に関わる活性種が同定されていないために、必要に応じてin vitroでの実験を並行しながら検証を進める。血液凝固因子のどこにトリガーがかかっているかは、ヘパリンといった阻害剤が入っている状態で実験を行えば良いが、in vivoかin vitroで進めるべきなのかは今後の実験結果の推移を見ながら臨機応変にアレンジする予定である。また、電圧を上昇させると止血効果が高まるのは明瞭であるものの、熱負荷のみならず電流刺激という点などからも人体へ為害性がでるために、プラズマ止血の機構を明らかにすることで、必要な活性種のみを供給するようなプラズマ放電条件の最適化を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行する上で大きな設備備品は特に必要ではなく、実験に必要な試薬などの消耗品、in vivo実験に必要な動物を中心に研究費を利用する。また打ち合わせならびに情報収集に必要な旅費を使うことを予定している。大阪大学と国立がん研究センターと物理的に離れた組織間での共同研究であるために、研究費はそれぞれで分配して利用することにする。
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Research Products
(4 results)