2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70180346)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 引き込み / 同期 / 非線形振動子 / 興奮性振動子 / 自励発振振動子 |
Research Abstract |
2つの自励発振非線形電気化学振動子の距離(r )を縮めると、結合相互作用(水素イオン濃度波動と電位波動の振幅)が高まり、電流自励振動の振動数と位相が一致した。各振動子の固有振動数が不一致でも、振動子間の距離が小さい場合、同期が起こった。このとき、遅い振動子が、速い振動子に引き込まれ、電流パルス時系列が一致した。同期の可否は、固有振動数比(ω1/ω2)と電極間距離(r)で定まり、同期と非同期の相図が得られた。同期は、1対1の同期(1:1)、1つ飛ばしの同期(1:2)など、多彩である。いずれも特徴的な3角形(アーノルドの舌)の同期相図となった。各振動子の固有振動数が一致していなくとも、同期範囲に「糊しろ」があることで、「みだれ」を持つ構造からでも機能が発現する。 非同期領域での結合では、孤立状態で周期発振する振動子を結合させると、カオスが生まれる。このことは、生体内のノイズ源(Stochastic Resonance)として意味を持つ。 細胞レベルの解剖学的所見によると、腎盂組織内ではカハール細胞(自励振動子)の密度が、下流に向かって低下することが報告されていて、そのように振動子を配列させた電気化学回路(ネットワーク)中のパルス伝播を調べた。この回路は、興奮振動子と自励振動子から構成される。2種類の振動子の空間配列を制御するだけで、信号伝搬の対称性が破れ、上流から下流へ一方向にパルスが伝搬した。さらに、自励振動子の密度を伝搬方向で減少させると、上流の破壊を補償する堅牢性が生まれた。腎盂の生理学的ふるまいと一致した。細胞レベルの解剖学的所見によると、腎盂組織内でもカハール細胞(自励振動子)の密度が、下流に向かって低下することが報告されていて、電気化学系ネットワークと構造的に一致し、かつ、設計コストも低く生理回路の設計の合理性が理解できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎盂は、腎臓と尿管をつなぐ組織であり、尿を膀胱に輸送するポンプである。腎盂を規範として、予備的に作った非線形電気化学回路で、回路を伝搬する電流パルスの時間発展を観測した。この回路は、興奮振動子と自励振動子から構成される。2種類の振動子の空間配列を制御するだけで、信号伝搬の対称性が破れ、上流から下流へ一方向にパルスが伝搬した。さらに、自励振動子の密度を伝搬方向で減少させると、上流の破壊を補償する堅牢性が生まれた。この結果は、腎盂の生理学的ふるまいと一致した。細胞レベルの解剖学的所見によると、腎盂組織内でもカハール細胞(自励振動子)の密度が、下流に向かって低下することが報告されていて、電気化学系ネットワークと構造的に一致し、かつ、設計コストも低い。 非線形電気化学ネットワークで生理機能(腎盂)をエミュレートできたことで、本研究の方向が確立されたと言え、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
自励振動子と結合する興奮性振動子の数を増加させて、系の固有振動を測定したところ、興奮振動子の数を増すに連れ、集団の固有振動数が指数関数的に低減した。この結果の背後にある機構の詳細は不明である。経験則に基づき、自励振動子の周囲に軸対称な配置で、複数(N個)の興奮振動子をおき、キャップ間距離(結合強度r)を変化させArnold の舌を求める。Nとrを変化させて得られる引き込み相図を解析して、自励振動子と興奮振動子の引き込みの機構と数理を明らかにする。 以上の研究を総合して、腎盂の検討な蠕動機能の発現は、①腎臓と腎盂の融合がrを制御しパルス伝播の単一方向性を生み、②カハール細胞密度分布が堅牢性の起源となっていると推定される。このことは、①腎盂上流部では腎臓細胞が混在するためrが大きく、②密度分布の制御という設計コストの低い機策で、堅牢性が生まれると考えれば、自然の設計指針を合理的に理解できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・ 非線形電気化学回路駆動電源を増設して、生体を規範とした大規模ネットワークの実験的制御に着手する。 ・ 絶縁を保ちながら、データー転送が可能なインターフェスをより高速化し、データー収集能力を向上させるとともに、計算機のCPUにXenonを4機搭載して計算能力の向上を図る。 ・共同研究を進めている、インド工大ムンバイ校とワルシャワ大に滞在して、主に、数理的な議論を深める。 ・実験に用いる電極の加工を補助者に依託して、実験の進捗を加速する。 ・電極材料や試薬など消耗品は、実験遂行に必須の経常費である。
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Research Products
(3 results)