2013 Fiscal Year Research-status Report
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24655002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70180346)
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Keywords | 非線形ネットワーク / 堅牢性 / 冗長性 / 非線形波動伝播 / 非線形化学 / 集団挙動 |
Research Abstract |
非線形電気化学振動子の集団挙動を、非線形力学系の観点から進めてきたが、知見が蓄えられるにつれて、生物的な運動、たとえば、クラゲの傘の開閉運動や、腎盂や大腸の蠕動運動を、連成振動子系で再構成できる可能性が見えてきた (S.Nakabayashi et al Phys.Rev.E 2002,2005など) 。これらの経験を踏まえて、(1)大脳からの指令を必要としない不随意運動の再構成、(2)部分的な破壊を克服できる堅牢なパルス・ジェネレータの機能(生物的には、腎盂中の信号伝播)を 非線形振動子のネットワークからエミュレートする。 生体臓器は部分的な損傷を受けても、臓器の機能が保全される仕組み「堅牢性」を有する。腎盂〔腎臓と尿管を結ぶ尿のしごきポンプ〕では、上流部が破損しても、下流部から収縮しごき運動が伝播し、輸送機能は保存される。損傷域が増すと、収縮周波数が低減される特徴を有する。本研究では、腎盂をモデルとして、堅牢性発現の仕組みを探る。 非線形電気化学振動子ネットワークを腎盂の細胞学的構造所見を本に組み上げ、伝搬する電流パルスの時間発展を得た。この時、興奮性振動子と自励振動性振動子には、それぞれ同一の電圧を印可した。2種類の振動子は、ネットワークの位置によらず、それぞれ同一の動作パラメータを持っていながら、空間配列だけの制御で、信号伝搬の対称性が破れ、上流から下流に向かう一方向性の流れが生じた。この時、自励振動性性振動子の密度を伝搬方向で減少させると、上流の破壊を補償する堅牢性が生まれた。この結果は、腎盂の生理学的信号伝搬と同一である。細胞レベルでの、解剖学的所見によると、腎盂組織内でもカハール細胞(自励振動性性振動子)の密度が、下流に向かって低下することが報告されている。人工系と天然系を比較して、堅牢な一方向伝播する波動の成性機構を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワーク中を電流パルスが、(1)「単一方向に伝播」し、かつ、(2)「上流部の損傷を補償する堅牢性」をもつ「腎盂機能発現」に必須なネットワーク空間配列を実験的に決定できた。この成果は、より単純な階層での機能発現、2非線形振動子間の引き込み〔同期〕現象に支えられている。単一ペアにおける「引き込み相図」は、振動子間の結合強度と固有振動数比の2変数系で実験的に求め、数理解析も完了できた。 単一ペアの引き込み現象を、非線形集団(ネットワーク)に拡張すると、下位の階層では観察されなかった堅牢性の発現が観測できた。現在の非線形ネットワークが要求する空間配置は、生理系での観察結果と好く一致し、研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在のネットワークの空間配置をどこまで冗長にしても、機能が保持されるかを明らかにする。 生理系では、生理ネットワークの中に、発火閾値よりも小さく、かつ,振動数の大きな雑音が重畳されている。この事実は、生理系では、雑音を上手に用いて、堅牢性を高めるとともに、ネットワークの構造に冗長性を許容する仕組みがあると推定できる。現在、この天然の仕組みを、確立依存共鳴に求め、単一ペアの引き込みから、手段化したネットワークの機能と雑音の強度と中心周波数の関係を解明しつつある。 また、振動子間の結合高度は、電解液中に銅板を漬け、バイポーラ-電極として動作させると制御可能であることが明らかになってきた。この事実は、ナットワーク中に、銅線をワイヤリングすることによって、局所的な結合高度が制御可能であることを示唆する結果とも言える。 今後は、雑音重畳および銅線ワイヤリングにより、ネットワークの機能を保全しながら、ネットワーク構造にどこまで、冗長度が許されるかを実験から探る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電極よう白金基板の消耗が少なく、合わせて、新規な清浄化法を開拓し、電極関係の消耗品を押さえることができた。ガラスセルを工夫することにより、溶媒、不活性ガス、試薬の支出を抑えることができた。また、原子間力顕微鏡測定用の探針は、前年度購入した備蓄により、支出を抑えることができた。以上の,実験上の工夫と測定上の工夫により消耗品の支出が低減された。本年度では,支出を抑えることと同時に、実験条件の確定が完了したので、次年度では,集中的に実験を進め成果を獲得する予定である。 本年度は、昨年度で確定した実験条件を基に、集中的に冗長性と堅牢性の関連を解明し、実験を数多くおこない期間内に成果を確立する予定である。具体的には、ネットワークの堅牢性と空間秩序の冗長性の向上の関連をノイズ源、および、ワイヤリングから明らかにする.このためには、集中的に数多くの実験をおこなうことが必要であり、本年度の実験遂行には昨年度に倍する実行経費が必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Brief Report: Reconstruction of Joint Hyaline Cartilage by Autologous Progenitor Cells Derived from Ear Elastic Cartilage2014
Author(s)
Mizuno, M ; Kobayashi, S ; Takebe, T; Kan, H; Yabuki, Y; Matsuzaki, T ; Yoshikawa, HY; Nakabayashi, S ; Ik, LJ ; Maegawa, J ; Taniguchi, H
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Journal Title
Stem Cells
Volume: 32
Pages: 816-821
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] High Contrast Visualization of Cell-Hydrogel Contact by Advanced Interferometric Optical Microscopy2014
Author(s)
:Matsuzaki, T (Matsuzaki, Takahisa) ; Sazaki, G (Sazaki, Gen); Suganuma, M (Suganuma, Masami); Watanabe, T (Watanabe, Tatsuro) ; Yamazaki, T (Yamazaki, Takashi) ; Tanaka, M (Tanaka, Motomu) ; Nakabayashi, S (Nakabayashi, Seiichiro) ; Yoshikawa, HY (Yoshikawa, Hiroshi Y.)
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Journal Title
JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY LETTERS
Volume: 5
Pages: 253-257
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Effect of Gel-Solution Interface on Femtosecond Laser-Induced Nucleation of Protein2013
Author(s)
Nakayama, S ; Yoshikawa, HY ; Murai, R ; Kurata, M ; Maruyama, M ; Sugiyama, S ; Aoki, Y ; Takahashi, Y ; Yoshimura, M ; Nakabayashi, S
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Journal Title
CRYSTAL GROWTH & DESIGN
Volume: 13
Pages: 1491-1496
DOI
Peer Reviewed
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