2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655003
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西川 恵子 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (60080470)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 相変化 / イオン液体 / ソフト化 / ダイナミクス / 超高感度熱量測定 / NMR / 緩和時間 |
Research Abstract |
本研究では,数多くの分子やイオンが関わる相変化において,時々刻々の変化を実験的に捉えることを目指している。そのためには(a) 比較的ゆっくりした相変化を起こす試料系を見出すこと,(b) 現象を捉える適切な方法論の構築と微弱な信号を検知できる分解能と応答時間を有する装置の開発や改良することを具体的な目標としている。 (a) においては,イオン液体の相挙動が本研究に最も合致した試料系であることが確認された。イオン液体の代表的なカチオンである,imidazolium 系のみならず,新たにpyrrolidinium 系の相挙動を熱測定・Raman測定・NMR 緩和時間測定を系統的に行い,芳香族系と脂環族系という骨格の違いが相挙動に及ぼす影響を抽出した。特に,imidazolium 系の3つの試料については,結晶化に1時間を要することを発見し,その結晶化の詳細を熱測定とNMR の緩和時間測定で観測し,昇温過程においてガラスのような固化状態から,一旦ソフト化が起こり,コンフォメーションを変えながら,結晶化していくことを発見した。これは,世界でも初めてと思われる現象の発見である。 (b)については,低磁場NMR 装置におけるF(19)(質量数19のフッ素)用のプローブをメーカと共に開発することにより,イオン液体のアニオンの主な構成元素であるフッ素の緩和時間測定が可能となった。このことにより,アニオンの動的挙動が相挙動に及ぼす過程を観測する道が開けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世界でも初と思われる現象(ガラス状態->ソフト化->結晶化)の発見は,想定以上の成果と言える。 本テーマである比較的ゆっくりした相変化を起こす試料系は,これまで扱ってきたimidazoliumに,新たにpyrrolidinium 系を加えることにより,骨格運動の違いによる新たな現象の発見に繋がった。これは,当初ある程度想定されていた成果である。 F(19)(質量数19のフッ素)用のプローブを用いて,イオン液体のアニオンのダイナミクスの詳細を追うことが出来るようになったことは,想定以上の成果といえる。 超高感度熱測定に於いては,自作の装置及び制御回路を用いている。古いタイプのパーソナルコンピュータの故障のため新しいコンピュータに変えたが,開発したプログラムとの相性が悪く,超高感度熱測定の予定が遅れた。本件はマイナス点である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本テーマに適したイオン液体系を試料として,系統的に実験を行っていく。カチオンは,imidazolium 系のみならず,pyrrolidonium 系,piperidinium系,ammonium系に拡張し,基本骨格自体がフレキシビリティを持つ系に発展させる。また,F(19)(質量数19のフッ素)用のプローブを用いてイオン液体を構成するアニオンを系統的に取り上げ,ダイナミクスと相挙動の関連づけを行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね,当初の計画通りの研究費使用を想定している。本研究の成果は,世界的に見てもユニークでオリジナリティを誇れる成果である。今年度未使用分の研究費は,主に海外での研究発表用に旅費として使用する。
|
Research Products
(13 results)