2012 Fiscal Year Research-status Report
キラル敏感非線形ラマン分光法による溶液中タンパク質の絶対立体配置の高速決定
Project/Area Number |
24655004
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加納 英明 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70334240)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | キラリティ / ラマン / CARS / 非線形 |
Research Abstract |
物質のキラリティーは、生命の発生、タンパク質の機能発現、サリドマイドの催奇作用など、化学・薬学・生命科学の分野を横断する非常に重要な分子の構造情報であり、これまで様々な方面から研究が行われている。しかしながら、従来の方法では分子の構造情報について間接的な知見しか得ることが出来ない。これに対して、ラマン分光を用いた光学活性測定(Raman optical activity; ROA)は、振動スペクトルに基づいた分子レベルの構造情報を得ることが出来るため、例えば溶液中におけるタンパク質の絶対立体配置の決定など、生体分子の機能を知る上で重要な知見を与えることができる。そこで本研究では、ラマン散乱光を増幅できる非線形ラマン散乱を用いることで、ROAの高速測定を実現し、タンパク質の絶対立体配置とそのダイナミクスについての知見を得ることを目標として研究を行っている。 本年度は、新しい光源、白色レーザーを用いることで、分子のキラリティーを検出するまったく新しい手法の開拓を行った。そして、非線形ラマン散乱の一種であるcoherent anti-Stokes Raman scattering(CARS)過程を効果的に用いることで、非線形ラマン分光法による分子のキラリティ検出に世界で初めて成功した。これにより、本手法が極めて有効であることを示した。本年度は、さらに装置の高感度化を目指して、分光干渉法を取り入れた全く新しいシステム(非線形ラマン分光干渉装置)の構築も試みた。現在までに、分光干渉法による予備的な結果を得ることができている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形ラマン散乱の一種であるcoherent anti-Stokes Raman scattering(CARS)過程を用いることで、非線形ラマン分光法による分子のキラリティ検出に世界で初めて成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発した装置を用いることで、水溶液中のタンパク質の測定を行う予定である。CARS-ROAによる高速測定の強みを活かし、natively unfolded proteinなど、X線構造解析やNMRなどの方法では構造決定が難しいタンパク質をターゲットとして研究を展開する予定である。これにより、CARS-ROAによる分子構造・タンパク質機能解析の基礎を固める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|