2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655008
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
尾関 寿美男 信州大学, 理学部, 教授 (60152493)
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Keywords | 磁場 / 磁場配向 / カーボンナノチューブ / キラリティー / 単層カーボンナノチューブ / 多層カーボンナノチューブ / ラマン散乱 |
Research Abstract |
研究期間中に,カーボンナノチューブ(CNT)の生成過程の化学種とCNT自身との磁気的相互作用を利用して核生成から成長までの構造形成の全過程に磁場を有効に働かせて,磁気異方性の大きいベンゼン環の集積体である形状磁気異方性CNTの太さと長さ,配向性,グラフェン網面内のキラリティーを磁場制御する。とくに,物性の観点からシングルウォールCNTのカイラル指数の磁場制御をめざす。前年度に,強磁場(<10T)中に高温電気炉(<1500K)を自作して設置し,マルチウォールCNT(MWCNT)およびシングルウォールCNT(SWCNT)をエタノール蒸気の化学気相成長法(CVD法)で磁場中合成することに成功した。 H25年度は,新たに液相分解法によるSWCNTの調製を磁場中で試みた。液相分解法はアーク放電法,CVD法,レーザーアブレーション法などの代表的生成法ではないが,簡便な大量合成や修飾の多様性の観点から興味深い。これまでに炭素源に有機溶媒を使用して,通電加熱した基板上にSWCNTとMWCNTの生成を確認している。この方法はCNTの成長速度がきわめて速いと考えられるほか,電場が基盤に存在するために電界の効果も期待でき,CVD法とは異なる場でCNTの調製を行うことができる。我々はCVD法との違いに注目して生成するCNTの構造を検討するため,磁場中で液相分解法によるCNT合成が可能な装置を作成し,SWCNTの調製を行った。電極に固定されたカーボンペーパー(基板でもある)上にSWCNTが生成した。磁場中では直径が太いSWCNTの成長が抑制され直径が細いSWCNTの成長が促進された。この結果は磁場中でCVD法により生成したSWCNTの特徴と一致した。15Tのパルス磁場の連続照射による構造制御には成功していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度以降の計画では6項目について3名の大学院生とともに検討する予定であったが、現在このプロジェクトを担当できる大学院生が1名なので、その中の2項目に限り実施し,ほぼ計画を達成した。超伝導マグネットの10Tの静磁場中でのSCNTの液相合成に成功し,磁場による構造制御を達成した。前年度に回転磁場をパルス磁場に変更して実施したCNT合成実験は多くを試みた。磁場効果の検出には至っていないが,実験はほぼ予定通り実施した。残りの項目は,26年度に1名の4年生が加わって実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
電極に固定された基板(カーボンペーパー)上に生成したSWCNTの直径が磁場によって変化されることが示されたので,今後は,基板の電導度を探索的に上げ,電流との相互作用による荷電化学種や電子のサイクロトロン運動によるキラリティーの制御を試みる。磁場による半導体性や金属性のSWCNTの選択的合成の可能性を念頭に,申請書に記述した以下の実験的検討を実施する。 ○自由界面におけるローレンツ効果 ○磁場と電流とのシンクロ効果 ○電導度測定の試み
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
保有している2台の無冷媒超伝導マグネットのメンテナンス(1万時間点検および2万時間点検)のために,研究費を繰り越した。 消耗品費:合成用基板の材質・組成,特に電導性を検討するための試薬や金属触媒調製用試薬を購入する。CNT調製用のガスボンベや排ガストラップ用の寒材の費用が必要である。 測定料:CNT観察のための透過電子顕微鏡やXPSの使用料を計上する。 マグネット保守費:1台の6T超伝導マグネットの2万時間のメンテナンス費(700千円)として使用する。 旅費:成果を発表するための学会(MAP6など)へ参加するための旅費を計上する。
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Research Products
(2 results)