2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子間振動モード励起による有機固体中電荷移動機構の解明
Project/Area Number |
24655011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 一也 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30300718)
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Keywords | 超高速分光 / 格子振動 / 有機固体 / 励起状態ダイナミクス |
Research Abstract |
初年度は,有機固体中分子間振動モードの選択励起のための光学系の構築を行った.チタンサファイアレーザー再生増幅器の出力を波長変換する非同軸パラメトリック増幅器を構築しその出力を時間間隔可変な極短パルス列に変換するマッハツェンダー型の干渉計を構築し,パルス列の発生を確認した.最終年度は,このパルス列発生光学系に加え,35-300 Kの間で温度可変な真空セルを構築し,パルス列励起によるルブレン単結晶中の光励起状態ダイナミクスの測定を試みた.35 Kに保持したルブレンのS1-S0遷移吸収端に設定したパルス列(時間間隔70~400 fsの間で可変)による励起を行い,続くSn-S1およびTn-T1過渡吸収の吸光度がパルス列間隔に依存してどのように変調を受けるかを調べた. 加えて最終年度には,フェムト秒単一パルスによるルブレン単結晶中のコヒーレントフォノンの生成減衰挙動を明らかにした.S1-S0遷移吸収端付近の中心波長(512 nm)を有するフェムト秒パルス励起による過渡吸収信号には,83,108,および124 cm-1の中心周波数を有する振動波形が重畳し電子励起と結合したフォノンの生成を示唆する.さらに,83 cm-1の振動成分は励起後約1 psかけてその振動数が約5 cm-1低周波数シフトし,加えて振動振幅が増大するという特異な挙動を示すことがわかった.これは,励起直後に起きると期待されるsinglet fission過程の中間状態生成に伴う変化を捉えた可能性があると考えている. 本研究の目的である有機固体中のキャリア移動におけるフォノン励起効果を調べるためには,高いキャリア移動度を有する物質の光誘起電荷分離挙動を対象にすることが望ましい.そこで,最終年度には高い正孔移動度を示すことで知られるジナフトチエノチオフェン薄膜の電子励起状態ダイナミクスを過渡吸収測定により明らかにした.
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