2012 Fiscal Year Research-status Report
多光子光化学反応の観測・解析のための新規2パルス相関法の開発
Project/Area Number |
24655015
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
和田 昭英 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (20202418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冬木 正紀 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40564787)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 2パルス相関法 / フーリエ変換型分光法 / 超高速分光 / 光化学反応経路 / 光異性化反応 / 多光子励起反応 |
Research Abstract |
1)新規2パルス相関法の開発 : 通常の2パルス相関法においては,個々のパルス由来の信号の上に2つのパルスの交差信号が重畳する。2パルス相関測定では交差項に相関情報が含まれており,個々のパルスの信号に埋もれた相関信号のみを抽出できることは,2パルス相関測定において重要な意味を持つ。本研究では,繰返し周波数が1kHz程度の低繰返しのレーザーシステムにも適用できる新規な相関信号抽出法を開発し,その有効性の検証を行った。その結果,バックグランドとして表れるような時定数の長い相関信号まで本方法により選択的に抽出できることを示した。さらに個々のパルスに由来する信号が除去されていることから,S/N比が著しく向上することもわかった。[Appl. Spectrosc., 66, 1475-1479 (2012)] 2)2パルス相関法による光反応の解析 : 本研究課題での原理検証実験に用いることが出来るような反応系の探索を視野に入れて,1光子過程に並行して多光子過程でも進行するような複数の反応経路が予想される反応系としてシアニン色素の一種であるDTTCIの光異性化反応を超高速分光法と2パルス相関法により検討した。その結果,2光子励起によって生じる光異性化速度が1光子励起の場合よりも速く,最低励起状態の寿命(1ns)よりも短い約0.5nsでシス状態へと変化していくことを明らかにした[Chem. Phys., in press]。他のシアニン色素であるIndocyanine greenにおいては,シス‐トランス光異性化を起こす経路と水素付加によるロイコ体を精製する経路とでは励起に関わる光子数がそれぞれ4光子励起と3光子励起と異なることを明らかにした。[J. PhotoChem. Photobiol]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は干渉計の作成と2パルス相関法の改善に主軸をおいて研究を進めた。 1)干渉計の作成 : 本研究課題の要となる干渉計の作成はほぼ終了した。ファブリー・ペロー干渉計のミラー間隔をnmオーダーで掃引したときの透過光の強度変化に関して,様々な反射素子(多層膜ミラー,ハーフミラー,ビームスプリッター,石英板)を検討した。その結果,クロム蒸着のハーフミラーが波長領域,干渉フリンジのコントラスト,干渉フリンジの形状に関してバランスの取れた性質を示した。波長領域とコントラストに関しては400nm~1000nmにかけて0.3~0.45の値を示した。また,干渉フリンジの形状も三角関数に近い形状を示し,コントラストも0.3以上の良好な値を示すことが確認された。掃引ステップも30nm間隔で安定した掃引ができることが確認された。以上の結果から,400nm~1000nmの波長領域での使用が可能なことが確認され,原理的には300nm以下の波長の光まで変調が可能であると思われる。 2)新規2パルス相関法の開発 : 研究実績の概要の部分でも述べたように,本研究課題で重要な役割を果たす新規な2パルス相関法の開発にも成功した。この新手法を本研究へ適用することで,これまで観測の難しかった寿命の長い弱い相関信号も従来よりも高いS/N比で観測することが可能になる。 3)2パルス相関法による光反応の解析 :本研究課題での原理検証実験に用いるために,1光子過程に加えて多光子過程を含んだ反応経路が並行している反応系としてシアニン色素の光異性化の反応経路に関して超高速分光法と2パルス相関法により検討した。その結果,1光子過程に加えて複数の多光子過程が並行していることが判明し,原理検証実験に用いる試料として有用であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)分光器との同期と新規2パルス相関法の適用 : 本研究課題の主軸であるフーリエ変換型2パルス相関法は,干渉計の鏡間隔とプローブ波長(過渡吸収・発光など)を変数とする2次元計測なので,プローブ光のマルチチャンネル計測は必須である。また,初年度で確立した新規手法との融合も,S/N比や測定時間の効率化などから必要である。以上のことを踏まえて,マルチチャンネル分光器を干渉計の掃引に同期させる。そして新規手法を適用するために,励起光源(2本のビーム)の位相をずらしたON/OFF変調を行い,変調に合わせたマルチチャンネル信号の取り込みを行う。以上の2点を取り入れたシステムを構築する。[今年度前半] 2)原理検証実験 : システムの構築が出来次第,原理検証実験を行う。試料としては,初年度に反応経路の詳細について明らかにしたシアニン色素に加えて,様々な分野で分子素子として注目されているアゾベンゼン誘導体や多段階吸収過程があることが判っているローダミン6Gを用いる。原理検証実験では,構築したシステムの評価に加えて,励起ビームの変更や強度バランスを変えた非対称2パルス相関法に関しても,その有効性について検討する。なお,アゾベンゼン誘導体に関しては現在並行して,その反応経路について分光学的見地から計測・解析を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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