2012 Fiscal Year Research-status Report
可視光触媒化学に基づく二酸化炭素のゼロエミッション型化学変換法の開拓
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24655026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 進 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90273268)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 可視光触媒化学 / CO2 / 電荷移動錯体 / 炭素-炭素結合形成 |
Research Abstract |
可視光(λ >420 nm)を用いて犠牲試薬(還元剤)なしの条件下、CO2からカルボン酸誘導体へと変換する方法に挑んだ。CO2に対する所望の結合形成以外では塩廃棄物ゼロエミッションである点が従来法とは明確に異なる。触媒としての有機分子と反応基質との間の弱い相互作用(π/π*, σC-H/π*, n/π*相互作用など)によって形成される電荷移動錯体{Charge Transfer Complex (CTC)}が可視光を吸収する性質を利用した。触媒分子も反応基質も、分子単独では可視光を吸収しないが、これら二分子で形成されるCTCのみが可視光を吸収するシステムを利用して反応基質のZ-H結合(Z = C, N, O, Sなど)をホモリティックに切断しCO2と反応させることを目的とした。平成24年度は様々なPUV(電子受容体)とZH(電子供与体)との間で形成されるCTCの分子構造をTD-DFT等の手法を用いて計算し、どのようなUV-Vis吸収スペクトルが得られるかをまずは見積もった。この調査と平行し、ZHと反応させたい基質として不飽和極性官能基をもつ化合物群{オレフィン類、イミン類(Y=X基)}を選び、> 420 nmの光を用いて様々な可視光触媒反応を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CO2を固定化する光反応に先立ち、光照射下でも脱炭酸を起こさないカルボン酸を調査した。その結果、例えばトルエンがCO2に付加したカルボン酸であるプェニル酢酸やマロン酸などその誘導体を用いた場合、脱炭酸が多かれ少なかれ進行し、系中の水と反応したと思われるベンズアルデヒドが主に形成された。まだCO2をC-C結合を形成しながら捕捉するのに最も適したZを見つけることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた知見に基づき、比較的電子豊富なY=X基とも反応するPUVとZH、もしくは最も反応性の高かったPUVとZHの組み合わせを用いてH25年度はCO2と[HPUV・][Z・]の反応を検討する。CO2の溶存濃度を高く保つために、まずは適切な第1級アミン(RNH2)を触媒量用いることとする。すなわち、この第1級アミンとCO2とが形成するcarbamic acid (RNHCO2H) (Tetrahedron 2003, 59, 9619)を用いる方法を検討する。carbamic acidは室温付近では安定にその構造を保つことがよく知られている。またRNH2の窒素原子の非共有電子対がCO2でマスクされることによって、その酸化電位はよりプラス側に移る。この酸化電位の変化によって、アミンの電子が引き抜かれてアミンが還元剤として働くといった、これまでよく知られた犠牲試薬としての分解プロセスも回避できると推測できる。これらの実験では、[HPUV・][Z・] + RNHCO2H → [PUV][Z・] + [RNHCO2H2]・ → [PUV] + Z-CONHR + H2O(PUVは触媒;RNH2は反応基質)、もしくは最右辺の項が[PUV] + Z-CO2H + RNH2(PUVもRNH2も触媒)となる2種類のプロセスを開発したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に光照射装置に関わる光源やフィルター、また各種試薬、溶媒類、光照射用反応容器など、反応スクリーニングを効果的に迅速に行うために消耗品費の購入に主にあてたい。
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Research Products
(5 results)