2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | フラーレン |
Research Abstract |
フラーレンC60の内部は球状のπ電子系に取り囲まれた内径約3.7Åの特異な空間であり、H2, H2O, CO等の小分子が内包されるのに最適な大きさである。これまで、He, Ne等の希ガス、あるいはN, P単原子が極めて低収率(0.1-0.01%)で、極めて過酷な条件下(3000気圧・650℃、あるいはイオンビーム照射)でのみC60内部に挿入可能なことが知られている。しかし、これらの内包フラーレン類の単離精製は非常に困難であり、物性研究はほとんどなされていない。また、金属イオンを内包したフラーレンは、多大な労力を伴う分離精製の後にほんの微少量が得られるのみである。このように、フラーレンの内部空間に合理的にアクセスし、小分子を内部に導入する手法自体が欠如していたため、フラーレンのπ電子系と小分子との相互作用に関する研究は全く未開拓である。フラーレンのσ骨格を切断して開口部を設け、そこから任意の小分子や金属を内部に導入する手法が開発されれば、内包フラーレンならびに炭素クラスターの物性科学にブレークスルーをもたらすことができる。 本研究では、16員環の開口部をもつテトラケトン誘導体に対して還元剤存在下、単体硫黄との反応をおこない、開口部が硫黄で拡大された開口フラーレン誘導体を合成した。すなわち、テトラケトン体に対して,アミン存在下で単体硫黄を反応させたところ,開口部に硫黄が一つ挿入された17員環開口体だけでなく,硫黄が二つ挿入された18員環開口体,およびそのカルボニル基の一つが脱離した17員環開口体が生成することを見出した。さらに,得られた17員環開口フラーレン誘導体の粉末を高圧の窒素ガスに接触させたあと,開口部を縮小することで、窒素分子を内包したフラーレン誘導体の合成を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、新しい開口フラーレン誘導体を合成することが最も重要である。フラーレンC60へのピリダジン誘導体の付加反応によりフラーレン骨格上に小さな開口部を形成し、その開口部の炭素=炭素二重結合を順次切断することにより巨大な開口部を構築するという計画に沿って研究を行った。その結果、硫黄により開口部を拡大する反応を見つけることが出来た。さらに、そこから穏和な条件下で、窒素分子を内包させることに成功している。本研究結果は、NH3, HF, CO, O2, H2CO等の電気双極子をもつ小分子やHg, Fe等の金属原子を内部に挿入することを検討する上で極めて重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
空のC60への窒素原子挿入、ならびにリチウム原子の挿入が、プラズマ条件下、あるいはイオンビーム条件下で可能であることが知られている。分子内包フラーレンに対して、この条件を適用すれば、内包分子と窒素原子、あるいはリチウム原子との化学反応により、フラーレン骨格内部で磁気双極子をもつ化学種を発生できることが期待される。そこで、H2@C60ならびにH2O@C60へのNまたはLi挿入反応により、フラーレン内部でのNH2ラジカルやNH2Oラジカル、あるいはLiH2, LiH2O種の発生を試みる。 空のC60の場合と同様に、水素分子を内包したフラーレンC60では、光照射により比較的寿命の長い三重項励起状態を与えることが知られている。本研究で合成した小分子内包C60においても、三重項励起状態の寿命を測定し、内包小分子の電気双極子との相関を明らかにする。さらに、C60に内包された水素分子のオルトーパラ変換を参考に、内包水分子のオルトーパラ変換を観測し、フラーレン骨格との相互作用を明らかにする。 C60は優れたn型半導体としての性質を有することが知られている。本研究計画で得られるH2O@C60では、内包水単分子に由来する電気双極子が存在する。電気双極子の整列による電子の移動度向上を期待し、H2O@C60の薄膜を用いた電界効果型トランジスタを作成し、その特性を評価する。デバイスの作成と評価は、北陸先端大学院大学の村田英幸教授との共同研究として行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)