2012 Fiscal Year Research-status Report
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24655029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311769)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 円二色性 / ヘリセン / 旋光度 / らせん / 理論計算 / 電子遷移モーメント / 磁気遷移モーメント / ダブルヘリセン |
Research Abstract |
ヘリセンはらせんを有する興味深いキラル化合物である。その比旋光度や円二色性は特異的に強い値を示すことから、とくにキロプティカル特性に興味が持たれる。これまでに多数のヘリセン分子が合成、報告されているが、置換基導入などによって構造上のひずみや電子的効果を加えても、得られる円二色(CD)スペクトルはほとんど変化しないことが明らかとなっている。すなわち、ヘリセン構造に基づくマテリアルの創生戦略においては単純なヘリセンの誘導体化以外の何らかのストラテジーが必要である。より具体的には、電子遷移モーメントと磁気遷移モーメントの強度や方向を制御することが必要である。本年度は、まず、これらのCDの支配因子に関する基礎的な知見を得るため、置換基効果を体系的に検討し、その電子的効果、立体効果のそれぞれの寄与を明らかとし、また、ヘリセンの環の数の効果も、理論計算と実験の両面からの検討で明らかとした。これらの成果はJ. Am. Chem. Soc.誌などのアメリカ化学会誌へ報告した。さらに、実際にこれらの知見をマテリアル創生に応用するため、具体的な研究ターゲットとして強力なCDを示すヘリセン様有機材料を設計・合成することを目的としてフュージョンしたヘリセン(ダブルヘリセンなど)設計し、実際に合成にも着手した。これまでの成果は、基礎有機化学討論会、モレキュラーキラリティーなどの学会発表、ドイツで開催されたSymposium on Chiralityでの招待講演などで発表したほか、リストに示すような国際誌に報告した。また、一般向けへの広報活動の一環として、化学誌への記事を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の本年度の当初計画、およびその規模が妥当であり、また、初年度としては特段の問題もなく順調に進んでいる。また、すでに着実に成果を上げつつある。 (1)主にヘリセン類のキロプティカル特性に関する基礎的研究が十分達成され、J. Am. Chem. Soc.誌へ2報の報告をはじめ、成果報告がリストのとおり際立っている。 (2)国際会議での招待講演で研究が認められた。 (3)一般雑誌化学への読み物の執筆。 (4)初期的検討において、一種類のヒューズしたヘリセン(ダブルヘリセン)を合成しそのCDスペクトルを測定したところ、提案どおり、3倍を越える強度のコットン効果を示した。提案の予測内の結果ではあるが、実証されたことで、その起源等を真に迫る必要があると考えており、今後展開する。 これらの結果は、当初計画を質、量ともに凌駕するものであるため、(1)の判定であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しているため、来年度も当初研究計画通り研究を進める。現時点ではプロジェクト全体の変更点や問題点は特に見当たらない。 今年度担当の4年生が就職のためプロジェクトから離脱したものの新しく修士の学生を加え検討を進める予定である。学生にとっては新しいテーマとなるため少し手惑う部分もあるとは考えられるが今後もこのペースで予定通り検討を進める。今年度は特に、いくつかのヒューズドヘリセン(ダブルヘリセン)の設計、合成にあてる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の主たる目的はダブルヘリセンの合成であり、したがって、本年度の経費は主に合成に必要な試薬などの消耗品、成果発表にかかる旅費等にあてる。
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[Journal Article] Cyclodextrin Nanosponge-sensitized Enantiodifferentiating Photoisomerization of Cyclooctene and 1,3-Cyclooctadiene2012
Author(s)
W. Liang, C. Yang, M. Nishijima, G. Fukuhara, T. Mori, A. Mele, F. Castiglione, F. Caldera, F. Trotta, Y. Inoue
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Journal Title
Beilstein Journal of Organic Chemistry
Volume: 8
Pages: 1305-131
DOI
Peer Reviewed
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