2012 Fiscal Year Research-status Report
「一電子σ結合」ーラジカルカチオンで展開する新しい化学結合論への挑戦ー
Project/Area Number |
24655037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
池田 浩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30211717)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機化学 / 電子移動反応 / 光化学反応 / レーザーフラッシュフォトリシス / 熱ルミネッセンス / 過渡吸収 / ラジカルカチオン塩 / DFT計算 |
Research Abstract |
本研究では,ジアリール置換したかご型化合物を用いて「一電子σ結合」を有する有機ラジカルカチオン1・+を発生させ,その観測を行うと共に,最終的にはそれらを有機塩として世界で初めて単離することを目標とする.静的な安定分子と動的な不安定(高反応性)ラジカルカチオンの境界領域における多様な化学結合を開拓する.これをもってPauling以来の化学結合論と動的分子理論(電子波束論)における「電子の動き」の研究に新しい一頁を加え,新展開の契機とする.具体的には3年間の内に,以下の2項目を行う予定で,平成24年度は主に項目(1)について,次の①,②,を行う計画を立てた. 項目(1)「一電子σ結合」を有するラジカルカチオン1・+の分光学的実験観測と理論的評価 項目(2)「一電子σ結合」を有するラジカルカチオン塩1・+X-の単離と理論的評価 ①基質合成(基質1および比較化合物3について各種アリール誘導体の合成) ②LFP法による過渡吸収観測(YAGレーザー(355 nm励起)を用いた光誘起電子移動反応による,ラジカルカチオンのナノ秒過渡吸収スペクトルの観測.メタノールなどの求核剤を用いた捕捉反応に基づいた,ラジカルカチオンの電子的な構造についての検討) 平成24年度は実際に,トリフェニルアミン骨格を有する新規化合物1の①基質合成を新たに行い,②LFP法による過渡吸収観測を検討した.成果発表としては,これまでに得られた知見を中心に,学会発表(学生によるもの,5件),招待講演(研究代表者のによるもの,8件,第13項参照),および論文発表(5件,第13項参照)を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は実際に,トリフェニルアミン骨格を有する新規化合物1のLFP法などで得られた知見は,予想外の結果を含むものであり,最新のDFT計算でも予期できないものであった.具体的には,光誘起電子移動反応で生成する本基質1のラジカルカチオン1・+は,DFT計算では一電子σ結合性を有し,少なくともナノ秒時間分解能をもつレーザーフラッシュフォトリシスではその存在を確認できるほどの寿命をもつものと予想された. しかし,実際に発生した1・+は,ナノ秒未満の短寿命性・高反応性の反応中間体であることが実験で確かめられた.これらの結果は,最終目標である項目(2)「一電子σ結合」を有するラジカルカチオン塩1・+X-の単離と理論的評価 に大きな知見を与えるものであり,上記の達成度となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究で得られた貴重な知見をもとに,新たな基質1を設計し,項目(1)の①,②の検討を行う.当初の予定に変更はなく,例えば平成25 年度は,以下の③,④,⑤,⑥と,項目(2)の①を行う. ③γ線およびX線誘起熱ルミネッセンス γ線およびX線誘起熱発ルミネッセンスの実験を行い,発光種の前駆体であるラジカルカチオンの構造を発光波長から判断する. ④ラジカルカチオン塩の単離 中性基質1から派生するラジカルカチオン塩1・+X-を調整する.この際,アミニウム塩による一電子酸化や電解反応を利用する. ⑤X線結晶構造解析とESR測定 中性基質1および塩1・+X-のX線結晶構造解析により,「一電子σ結合」を確認する.また,ESR測定により電子構造を明らかにする. ⑥理論化学計算 密度汎関数理論法(DFT法)による1・+X-の分子構造と電子構造(図6)を明らかにし,各種実験との比較を行う.また,Atom in Molecules(AIM)解析を行い,炭素原子間の求引的相互作用について定量的に評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として,基質合成に必要な薬品,溶媒を購入するための物品費,研究を効率よく行うための人件費,および共同研究打合せと成果発表のための旅費に使う予定である.現在のところ,50万円以上の設備備品の費用については,考えていない.
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] 3,14-Bis(p-nitrophenyl)-17,17-dipentyltetrabenzo[a,c,g,i]fluorene: A New Fluorophore Displaying Both Remarkable Solvatochromism and Crystalline-Induced Emission2013
Author(s)
Ueda, U.; Tanigawa, Y.; Kitamura, C.; Ikeda, H.; Yoshimoto, Y.; Tanaka, M.; Mizuno K.; Kurata, H.; Kawase, T.
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Journal Title
Chem. Asian J.
Volume: 8
Pages: 392-399
DOI
Peer Reviewed
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