2013 Fiscal Year Research-status Report
「一電子σ結合」ーラジカルカチオンで展開する新しい化学結合論への挑戦ー
Project/Area Number |
24655037
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
池田 浩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30211717)
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Keywords | 有機化学 / 電子移動反応 / 光化学反応 / レーザーフラッシュフォトリシス / 熱ルミネッセンス / 過渡吸収 / ラジカルカチオン塩 / DFT計算 |
Research Abstract |
本研究では,ジアリール置換したかご型化合物を用いて「一電子σ結合」を有する有機ラジカルカチオン1・+を発生させ,その観測を行うと共に,最終的にはそれらを有機塩として世界で初めて単離することを目標とする.静的な安定分子と動的な不安定(高反応性)ラジカルカチオンの境界領域における多様な化学結合を開拓する.これをもってPauling以来の化学結合論と動的分子理論(電子波束論)における「電子の動き」の研究に新しい一頁を加え,新展開の契機とする.具体的には3年間の内に,以下の2項目を行う予定で,平成25年度は主に項目(1)について,次の①,②,を行う計画を立てた. 項目(1)「一電子σ結合」を有するラジカルカチオン中間体1・+の溶液中における分光学的実験観測と理論的評価 項目(2)「一電子σ結合」を有するラジカルカチオン塩1・+X-の単離と理論的評価 ①基質合成(基質1および比較化合物3について各種アリール誘導体を合成) ②LFP法による過渡吸収観測(YAGレーザー(355 nm励起)を用いた光誘起電子移動反応による,ラジカルカチオンのナノ秒過渡吸収スペクトルの観測.メタノールなどの求核剤を用いた捕捉反応に基づいた,ラジカルカチオンの電子的な構造についての検討.) 平成25年度は実際に,トリフェニルアミン骨格を有する新規化合物1の①基質合成を新たに行い,②FP法による過渡吸収観測を検討した.さらに,アミニウム塩を用いた一電子酸化反応を行い,フェノニウムイオンを部分構造とするラジカルカチオンの分子内捕捉に成功した.成果発表としては,これまでに得られた知見を中心に,学会発表(学生によるもの,約50件),招待講演(研究代表者によるもの,10件,第13項参照),および論文発表(11件,第13項参照)を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
区分:予想以上に順調に進行している. 理由:平成25年度においては,トリフェニルアミン骨格を有する新規化合物1のアミニウム塩を用いた一電子酸化反応を行った.その結果,フェノニウムイオンを部分構造とするラジカルカチオン中間体の分子内捕捉が起こり,最終的には得意な橋掛け構造を有するイミニウム塩とし捕捉物を単離することに成功した.フェノニウムイオンは,フェニル基の隣接基関与やWagner-Meerwine 転位において重要な役割を果たす反応性中間体で,それをまったく安定な化合物として捕捉したことは興味深い.この化合物の構造は,単結晶X線構造解析や理論計算によって詳細に調べられた.また,この化合物は,当初期待した「一電子σ結合」を有するラジカルカチオンの塩ではないが,今後それを単離する上で,極めて重要な知見を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24-25年度の研究で得られた知見をもとに,平成26年度は,新たな基質1を設計し,上記の項目(1)に関する小項目①,②に加えて,③を行う.さらに,上記の項目(2)に関する,小項目④,⑤,⑥を行う. ③γ線およびX線誘起熱ルミネッセンス γ線およびX線誘起熱発ルミネッセンスの実験を行い,発光種の前駆体であるラジカルカチオンの構造を発光波長から判断する. ④ラジカルカチオン塩の単離 中性基質1から派生するラジカルカチオン塩1・+X-を調整する.この際,アミニウム塩による一電子酸化や電解反応を利用する. ⑤X線結晶構造解析とESR測定 中性基質1および塩1・+X-のX線結晶構造解析により,「一電子σ結合」を確認する.また,ESR測定により電子構造を明らかにする. ⑥理論化学計算 密度汎関数理論法(DFT法)による1・+X-の分子構造と電子構造(図6)を明らかにし,各種実験との比較を行う.また,Atom in Molecules(AIM)解析を行い,炭素原子間の求引的相互作用について定量的に評価する.
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Research Products
(25 results)
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[Journal Article] Pyreno[4,5-b]furan and Pyreno[4,5-b:9,10-b']difuran Derivatives as New Blue Fluorophores: Synthesis, Structure, and Electronic Properties2014
Author(s)
Kojima, T.; Yokota, R.; Kitamura, C.; Kurata, H.; Tanaka, M.; Ikeda, H.; Kawase, T.
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Journal Title
Chem. Lett.
Volume: 43
Pages: 696-698.
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] 3,14-Bis(p-nitrophenyl)-17,17-dipentyltetrabenzo[a,c,g,i]fluorene: A New Fluorophore Displaying Both Remarkable Solvatochromism and Crystalline-Induced Emission2013
Author(s)
Ueda, U.; Tanigawa, Y.; Kitamura, C.; Ikeda, H.; Yoshimoto, Y.; Tanaka, M.; Mizuno K.; Kurata, H.; Kawase, T.
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Journal Title
Chem. Asian J.
Volume: 8
Pages: 392-399
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Synthesis and Basic Properties of Tetrathieno[2,3-a:3',2'-c:2'',3''-f:3''',2'''-h]naphthalene: A New π-Conjugated System Obtained by Photoinduced Electrocyclization-Dehydrogenation Reactions of Tetra(3-thienyl)ethene2013
Author(s)
Yamamoto, A.; Ohta, E.; Kishigami, N.; Tsukahara, N.; Tomiyori, Y.; Sato, H.; Matsui, Y.; Kano, Y.; Mizuno, K.; Ikeda, H.
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Journal Title
Tetrahedron Lett.
Volume: 54
Pages: 4049-4053
DOI
Peer Reviewed
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