2012 Fiscal Year Research-status Report
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24655046
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石谷 治 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50272282)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多核錯体 / 光触媒 |
Research Abstract |
(1)光化学的ヒドリド錯体生成反応の一般化と不斉還元光触媒の開発 新たに合成したイリジウム錯体[Ir(tpy)(ppy)Cl]+ (tpy = terpyridine; ppy = 2-phenylpyridine)がトリエタノールアミン共存下光照射すると、ヒドリド錯体が生成することを見出した。この新規ヒドリド錯体は、このままではCO2と反応しないが、さらにアミン共存下光照射すると光電子移動反応によりさらに1電子還元される。この還元ヒドリド錯体がCO2と反応し、触媒的にCOが生成することが明らかになった。 (2)架橋配位子によりRuを複数近傍に配置した多核錯体の合成と多電子還元光触媒能の付与 新たにジベンゾフランを架橋部として持つ2,2'-bipyridine (bpy)が2つ結合した配位子を合成した。この4座配位子に2分子の[Ru(tpy)(bpy)(MeCN)]2+型錯体を結合させた新規2核錯体の合成に成功した。この錯体をトリエチルアミン共存下光照射すると2つの錯体のMeCN配位子がヒドリド配位子に変化した錯体が生成することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は、以下の2点であった。 (1)光化学的ヒドリド錯体生成反応の一般化と不斉還元光触媒の開発 [M(tpy)(bpy)(S)]2+型錯体の中心金属および多座配位子を様々に変えた錯体を合成し、トリエチルアミン共存下における光反応を行い、ヒドリド錯体が生成する条件を明らかにする。 (2)架橋配位子によりRuを複数近傍に配置した多核錯体の合成と多電子還元光触媒能の付与 1の計画では、これまでルテニウム錯体でしか報告例のなかった光化学的なヒドリド錯体生成反応がイリジウム錯体でも起こることを初めて見出した。また、このイリジウムヒドリド錯体は、ルテニウムヒドリド錯体と違いCO2とそのままでは反応しないが、発光する特性を生かしてレドックス光増感反応を組み込むことで、CO2を触媒的に還元する系へと発展することにも成功した(論文)。2の計画では、当初はtpy配位子を架橋配位子に組み込む予定であったが、合成上困難であることがわかった。そこで、tpyをbpyに変更することでこの問題を解決し、目的としていたルテニウム2核錯体の合成に成功した。この錯体のトリエチルアミン錯体共存下の光反応を検討することで、単核錯体と同様にヒドリド錯体が生成することを確認できた。このように、予定していた研究は、予想通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に研究は推移しているので、予定通り以下の3点の研究を行う予定である。 (1)光化学的ヒドリド錯体生成反応の一般化と不斉還元光触媒の開発:[M(tpy)(bpy)(S)]2+型錯体の中心金属および多座配位子を様々に変えた錯体を合成し、トリエチルアミン共存下における光反応を行い、ヒドリド錯体が生成する条件を明らかにする。(2)架橋配位子によりRuを複数近傍に配置した多核錯体の合成と多電子還元光触媒能の付与(3)担体上に固定した複数のRu錯体光触媒によるCO2多電子還元反応:架橋配位子もしくは担体を用いることで、Ruヒドリド錯体を近傍において光化学的に発生させ、CO2を順次的に多電子還元する光触媒系の開発を目指す。 1では、特に反応機構解明を進める。また、オスミウム錯体も合成し、その反応性を検討する予定である。2に関しては、CO2還元反応を検討する。3に関しては、研究を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費1,590,000円:ガラス器具、試薬、実験器具、高圧ガス使用料 旅費300,000円:国内学会参加2名×3回 謝金300,000円:情報収集及びデータ解析2ヵ月×1名 その他200,000円:ガラス器具改良(修理)、論文校正費用
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