2012 Fiscal Year Research-status Report
キラル金属錯体の動的分子運動を活用したマルチクロミック素子の開発
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24655053
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
三宅 弘之 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00271198)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | センシング / 超分子化学 / 不斉 / 発光 / 円偏光 |
Research Abstract |
金属錯体は配位幾何構造に応じて多彩な分光学的・磁気的性質を示すが、それらを溶液中で瞬時に変換できる置換活性な金属錯体は未だ限られている。本萌芽研究では、外部刺激に応答して構造変換のできる置換活性なキラル金属錯体の配位立体化学を基盤として、より高感度に発光検出が可能なマルチクロミック素子を開発する。本年度は次の研究成果を得た。 (1)外部刺激に応答するマルチクロミック素子の開発 キノリンアミドは紫外線励起により青色発光を示すが、塩基存在下にZn(II)錯体を形成すると緑色発光を示すようになる。本研究では、キノリンアミドを末端に含むキラルな多座配位子を合成し、Zn(II)錯体を調製した。調製したキラルZn(II)錯体の酸-塩基反応やアニオン刺激に応答した伸縮およびらせん反転運動を、NMRやCD法を用いて精査し、吸収色変換や発光色変換を伴うマルチクロミック検出を確立した。Eu(III)イオンとの錯体形成もpH応答性を示し、Zn(II)錯体とEu(III)錯体との共存系では、pHに応じて、赤-黄-緑と発光色を可逆的に変化させることも可能となった。このように、pH応答型発光色変換が可能なマルチクロミック素子を開発することができた。 (2)配位幾何構造の変換を伴うマルチクロミックシステムの構築 d8系の遷移金属錯体では、配位子場や配位子の構造に応じて六配位八面体型や平面四角形型構造を形成する。これらは分光学的特徴をはじめ、磁気的特徴も大きく異なるので魅力的なマルチクロミックシステムが開発できる。平面四角形構造の安定化が期待されるように、配位子両末端に弱い相互作用が可能なナフタレン環を導入した配位子を合成した。酸-塩基制御によるアミド配位部位の結合異性化を活用して、配位子場の可逆的ジオメトリースイッチングと磁性スイッチングを含むマルチクロミック錯体を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キラル金属錯体の動的構造スイッチングを活用したマルチクロミック素子について、初期システムの構築を行い、研究計画に沿った具体的な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究で得られる結果に基づき、それらをさらに発展させ、また新たに以下の研究も実施する。 (1)マルチクロミック錯体のさらなるキャラクタリゼーション 昨年度得られた配位子に加え、類似体を系統的に合成し、それらの酸解離定数や錯体の安定度定数、pH応答性についてさらに詳細に検討を加える。さらに、構造に関する情報も得る。 (2)多座配位子からなる発光性希土類錯体を活用したマルチクロミック素子の開発 希土類イオンの高配位特性を活用して、キラルまたはアキラルな生体基質の高感度センシングを行う。希土類中心に発光性のEu(III)やTb(III)を用いることで、発光や蛍光検出円二色性スペクトル(FDCD)検出による高感度なマルチ検出を目指す。 配位子の合成は申請者が既に開発した方法を組み合わせて行う。錯体形成や構造変換の追跡は、円偏光二色性スペクトル(CD)やFDCD、NMR、X-線結晶構造解析、円偏光発光(CPL)を用いて詳細に検討し、各錯体構造と外部基質の検出におけるクロミック特性を精査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に使用するキラル配位子を系統的に合成する予定であったが、合成・精製条件の検索に当初予想より時間を要したので残額が生じた。次年度に主として原料試薬や測定用セルの購入代金として使用する予定である。
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Research Products
(18 results)