2012 Fiscal Year Research-status Report
新規多重反射レーザーイオン化法による芳香族炭化水素の超高感度検出法の開発
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24655057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸野倉 賢一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (00260034)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | レーザーイオン化 |
Research Abstract |
近年、紫外レーザーを用いた2光子イオン化法による芳香族化合物の計測装置の開発が行われている。芳香族化合物の紫外レーザーによる2光子イオン化法は、イオン化閾値近傍で分子をイオン化できるので、イオン化時のフラグメンテーションを抑えて分子イオンの検出が可能である。この方法は、自動車排ガス中のサブppmレベルのトルエン、ナフタレンをはじめとした芳香族化合物を高精度にリアルタイムに計測することが可能であるが、大気中の芳香族化合物を高精度にリアルタイム計測できるレベルには至っていない。 本研究では、イオン化効率を従来のレーザーイオン化法に比べ向上させることが可能な新規多重反射レーザーイオン化手法を開発した。イオン化法としては、266 nm(4.66 eV)の紫外レーザーによる2光子イオン化法を採用した。トルエンをはじめとした大気環境中で重要な芳香族化合物の第一励起状態は、4.66 eV付近に存在し、イオン化エネルギーは9 eV程度である。したがって、266 nmの2光子過程で効率よくイオン化が可能である。イオン化光源としては、266 nmのダイオード励起Q-SW固体レーザーを用いた。特注の1組の誘電体多層膜コーティングのHerriott型多重反射ミラーを設計・製作し、これを可搬型飛行時間質量分析計に設置した。Herriott型多重反射ミラーの非コーティング面からレーザーを導入し数十回分子線に繰り返しレーザーを照射し、分子をイオン化した。トルエンに対する検出限界を測定し、本新規技術の有用性を確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トルエンを用いた芳香族化合物の検出では、分子線との組み合わせにより、サブppbレベルの検出感度を達成しており、自動車の排ガスのリアルタイム測定については十分な能力があることを実証できている。しかしながら、サブppbレベルの大気中の芳香族化合物をリアルタイムで高感度計測するには、更なる高感度化が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
光学シミュレーションの結果、光路を変更することにより検出下限を改善することが可能であったため、光学シミュレーション結果を基に再実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表等の旅費にあてる。
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