2012 Fiscal Year Research-status Report
新しいタンパク質再構成法に基づくタンパク質動態解析法の開発
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24655058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 憲 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60466795)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分析化学 / 生体分析 |
Research Abstract |
(1)不活性な完全長ルシフェラーゼを用いた相補的タンパク質再構成法の確立,および(2)細胞外のプロテアーゼ活性を検出するための環状ルシフェラーゼ,を開発する.(1)の開発により,「タンパク質の再構成法」に基づくタンパク質動態解析が高感度することが見込まれる.(2)は,これまでに報告例がない,細胞膜貫通型の環状ルシフェラーゼを開発し,細胞外プロテアーゼ活性を高精度で検出できることを実証する. 平成24年度は申請課題のうち,主に(2)に取り組んだ. ジャマイカ産ヒカリコメツキムシ由来の赤色発光ルシフェラーゼ(CBR)は,動物組織を効率よく透過する赤色発光を呈する.動物個体内のプロテアーゼ活性を検出することを見据え,これまで使用していた北米産ホタル由来ルシフェラーゼ(Fluc)に代えてCBRを利用し,プロテアーゼの1つであるカスパーゼ-3の活性を検出するインジケーターを作製した.このインジケーターを発現する細胞を抗Fas抗体およびシクロヘキシミド(CHX)で刺激したところ,カスパーゼ-3活性化に基づく約20倍の発光強度の増大が観察された. 次に,2種類のプロテアーゼ活性を同時検出することを見据え,CBRをジャマイカ産ヒカリコメツキムシ由来緑色発光ルシフェラーゼ(CBG)に置き換えたカスパーゼ-8活性インジケーターを作製した.このインジケーターを発現する細胞を抗Fas抗体およびCHXで刺激したところ,カスパーゼ-8活性化に基づく約10倍の発光強度の増大が観察された.また,カスパーゼ-3およびカスパーゼ-8の活性化の同時検出にも成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は,細胞外プロテアーゼ活性を高精度で検出するインジケーターの開発において重要な課題の1つである,インジケーターの高感度化を達成できた.また,2種類の異なるプロテアーゼ活性を同時検出することにも成功している.これらの取り組みは平成25年度に行う予定であったが,平成24年度内に達成している.もう一方の申請課題の進捗が遅れている状況を踏まえると,平成24年度は研究目的の8割程度の達成度であったと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,不活性な完全長ルシフェラーゼを用いた相補的タンパク質再構成法の確立を方策の中心に位置づけ,研究に取り組む. レニラルシフェラーゼ(Rluc)のAsp120,Glu144,His285が発光反応に重要であることは既知である.この知見に基づき,Asp120とGlu144の2カ所,もしくはHis285の1カ所をAla置換したRluc(それぞれiRluc1およびiRluc2)を作製する.タンパク質間相互作用などの積極的な外的駆動力がなければ,iRluc1とiRluc2との間で相補的な活性回復は起こらないと考えられる. ラパマイシン存在下で相互作用するタンパク質対FKBPおよびFRBをモデルとして,作製する改変Rlucがタンパク質間相互作用検出に利用できるか検証する.iRluc1およびiRluc2にFKBPおよびFRBを連結したキメラタンパク質を作製する.これらのキメラタンパク質を培養細胞内に発現させ,ラパマイシン刺激依存的に発光活性が回復するか検証することで,新たなタンパク質の再構成法としての実用性を示す. 以上の課題と並行し,引き続き,細胞外プロテアーゼ活性インジケーターの開発も行う.MMP-12を標的としたインジケーターを作製する.作製したインジケーターを発現する培養細胞を,生きたマウス個体の皮下に注射する.発光基質D-luciferinを腹腔注射した後,発光強度を測定する.その後,活性化MMP-12を静脈注射し,発光強度を測定する.MMP-12刺激前後での発光強度を比較することで,開発したインジケーターがin vivoイメージングに応用可能であることを実証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の交付予定額1,400千円(直接経費)および次年度使用額(B-A)1,168千円(直接経費)の合計2,568千円を,以下の内訳で本申請課題に使用する予定である. 消耗品費として,機能的発光タンパク質分子のcDNA作製に使用するDNAポリメラーゼや制限酵素・DNA精製に使用する試薬等の購入に368千円,細胞培養のための液体培地・血清等の購入に400千円,発光タンパク質分子の機能評価に使用するルシフェラーゼアッセイキット等の購入に500千円,本申請研究全般で必要な使い捨てプラスチック器具の購入に400千円必要である. 研究成果を国内・外の学会で発表するため700千円の旅費が必要である.その他,文献の印刷および学会参加登録費等に200千円必要である.
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