2013 Fiscal Year Annual Research Report
一重項酸素の新しい絶対濃度測定法の開発と新原理に基づいた高感度検出装置の試作
Project/Area Number |
24655060
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
八木 幹雄 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (00107369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 あづさ 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (30452048)
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Keywords | 一重項酸素 / 近赤外発光 / 電子常磁性共鳴 / りん光 / 活性酸素 / 紫外線吸収剤 / サンスクリーン剤 |
Research Abstract |
一重項酸素は酸素分子の最低電子励起状態であり,強い酸化力を持つため種々の疾患関連因子として,また光線力学療法におけるがん細胞壊死の主役として注目されている。一重項酸素は基底状態に緩和する際に近赤外領域の波長1270nmに固有のりん光を発する。この近赤外発光を検出する方法が一重項酸素の主たる物理的検出法となっている。しかし,一般に発光法による励起分子の定量は困難である。現在,種々の一重項酸素検出法が考案され高感度化が進行しているが,一重項酸素の定量は困難である状況が続いている。 酸素分子は基底状態が三重項状態であり,常磁性を示す極めて珍しい分子である。一重項酸素は軌道角運動量が死滅せずに残っているため,スピン角運動量がゼロの一重項状態であるにもかかわらず常磁性であり,電子スピン共鳴(ESR)装置と称される装置で観測可能である。本研究では,三重項酸素と一重項酸素が同時に検出されるEPR法の特性に注目した。基底状態の酸素を濃度標準物質とすることにより,一重項酸素の絶対濃度決定が可能である。 近赤外光電子増倍管モジュールとパルスレーザーを組合せて一重項酸素の時間分解りん光測定装置を作製した。溶液中で光増感生成した一重項酸素を検出し,装置の作動確認を行った。光透過型空洞共振器を用いて気相における一重項酸素の赤外発光-EPR同時検出装置を試作し,種々の圧力条件下で測定を行った。 溶液中の実験からは,ある種の紫外線吸収剤から一重項酸素が光増感生成することを明らかにした。気相中の実験からは,大気圧下における一重項酸素の近赤外発光検出に成功し,一重項酸素の寿命が求められた。しかし,EPR信号は線幅の広がりのために検出できなかった。一方,線幅が狭くなる低圧においてはEPR信号が検出されたが,近赤外発光は一重項酸素濃度が低いため観測されず,検出装置をさらに高感度化することが必要である。
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