2012 Fiscal Year Research-status Report
非標識バイオセンシングに向けた高触媒活性な窒素ドープグラフェン様薄膜電極開発
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24655071
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
丹羽 修 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 総括研究主幹 (70392644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 大 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (80533190)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電気化学 / 炭素材料 / 生体分子検出 / 酸素還元 / 過酸化水素還元 |
Research Abstract |
本研究では、DNA等の生体分子に対して高い電子移動速度を有し、かつ測定電位範囲が広い、電気化学検出器やセンサに用いる為のカーボン薄膜電極を開発する為、近年電極触媒として注目されている窒素を含んだ微結晶のグラフェン構造からなる薄膜を電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法により形成し、窒素量の最適化とスパッタ条件を検討することを目的とする。本年度は、窒素含有量を変えて作製した窒素ドープスパッタカーボン膜について、窒素濃度の増加でsp3結合が増加すること(グラファイト微結晶構造が減少)、窒素濃度が低い時と高い時で窒素元素の入り方が異なり、低濃度では、活性が大きいとされるグラファイト構造中の窒素が多く、窒素濃度が増加すると活性向上に寄与しないピリジン状の構造が増加することが分かった。また、窒素濃度が低い時(20%以下)では、電気化学特性に十分な導電性が得られることを確認した。次に窒素ドープカーボン薄膜の電気化学特性について検討した。窒素含有量が増加するとsp3結合の増加により電位窓が広がった。窒素含有に伴う電極表面は、従来報告された結果と異なり平坦性は、殆ど変化しなかった。 一方、フェロシアナイドの電気化学応答(電子移動速度)は、窒素濃度の増加により一度増加し、その後低下した。次に酸素と過酸化水素の還元について測定を行った。酸素還元では、かなりの還元電位のポジティブシフトが観測された。また過酸化水素の還元でも同様な傾向が見られ電流値も増加した。以上のことから、カーボンアロイや窒素ドープカーボンナノチューブで報告されているように、酸素還元と過酸化水素還元の過電圧が薄膜系の電極でも窒素含有によって大幅に低下することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素を含有したカーボンの構造解析に成功し、電気化学的にも窒素を含まないカーボン膜に比べて、酸素還元や過酸化水素の還元の過電圧の大幅な低下を観測できた。また構造と電気化学特性にある程度の相関が得られた。以上のように当初予定した窒素ドープカーボンの基本特性と窒素を含まない膜の比較は、順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、電子サイクロトロン共鳴法で形成したカーボン薄膜が、窒素を含まないカーボン膜に比較し、電位窓、酸化還元種の応答、酸素や過酸化水素の還元で明らかに窒素を含まないカーボン膜と比較し電気化学特性が異なることを確認した。平成25年度は、まず、電気化学反応のメカニズムを明らかにするため、窒素をグラファイト骨格内(膜内部)に含むカーボン膜と純粋なカーボン膜表面のみをプラズマ等で窒素化したカーボン膜について、その電極特性(活性種の応答、酸素還元など)を調べ、窒素含有カーボン膜の構造のどの部分が電気化学反応の過電圧低下に寄与するかを明らかにする。また、薄膜の過電圧低下は、カーボンアロイ等のバルクの材料に比較し、まだ特性向上が不十分なため、構造を最適化して特性向上をめざす。また、生体分子の検出についても窒素を含まないカーボン膜電極との比較を行い、酸化反応に対する過電圧低下やピーク電流の向上など電極特性の向上を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本萌芽研究の最終年度であるため、繰越した資金を含めて雇用費を増額し、窒素含有カーボンの電気化学特性、生体分子検出等に関しての論文のまとめ、および、窒素化による電極反応速度向上の要因を明らかにするため、グラファイト骨格内に窒素を有する膜と、表面のみ窒素化した膜の電気化学特性と構造の関係を調べ、論文化を行う。
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