2014 Fiscal Year Annual Research Report
新規炭素ラジカル発生法を基軸とする環境調和型有機合成法の開発
Project/Area Number |
24655074
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 勝清 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20251035)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ラジカル反応 / インジウム触媒 / 有機還元剤 / 炭素ラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、ケイ素単体を利用した安息香酸4-ヨードブチルのラジカル還元について検討した。ケイ素表面を削るエッチング剤としてフッ化アンモニウム水溶液を用いたところ、反応温度45 ℃で目的の還元反応が進行し、安息香酸ブチルを与えた。しかし、反応の再現性が乏しく(反応効率に大きなばらつきがある)、反応容器や撹拌子、反応時間、温度、エッチング剤などを変えたり、ラジカル開始剤の利用や超音波照射を行ったりしたが、改善は見られなかった。また、反応の過程でケイ素単体が凝集すること、ケイ素単体が硬く撹拌子やガラス容器が摩耗してしまうことが問題となり、実用的な有機合成への利用は難しいことがわかった。 研究期間全体では、触媒としてインジウム塩、還元剤としてギ酸ナトリウムを利用した有機ハロゲン化物のラジカル還元反応の開発に成功した。利用できる基質としては、第一級ハロゲン化アルキルやヨードアレーンなどに限られているが、比較的効率よく還元反応が進行した。また、発生した炭素ラジカル種をアルキンとの分子内付加反応に利用し、炭素環を構築することにも成功した。重水素化されたギ酸ナトリウムを用いた反応では、基質の重水素化は起こらず、環化反応の結果と合わせて、本反応がラジカル機構で進行することを示唆している。これまで、有機ハロゲン化物からの炭素ラジカル発生には、量論量の金属ヒドリドや低原子価金属が利用されてきたが、本研究により、極めて安価で取り扱いが容易な有機還元剤も、ラジカル反応に利用できることが明らかとなった。反応条件の改善や触媒量の低減など、まだまだ課題は多いが、ラジカル反応の実用性を高める上で意義深い研究成果であると言える。
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