2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655076
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 雅人 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (50169885)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 合成生物学 / ペプチド修飾 / システイン / S-アリル化 / ルテニウム |
Research Abstract |
ペプチドやタンパク質は,生合成後に修飾を受け,多様な機能が付与される.それらの機能解明や開発にむけて,人工的に修飾する合成生物学に近年高い注目が集まっている.数多くの修飾可能アミノ酸残基のなかでシステイン中のチオール基は存在比や特異的な反応性から重要な被修飾官能基として知られ,これまでに様々な官能基化法が報告されている.本研究では,新しいアプローチとして,脱水型アリル化反応による修飾法の確立を目的とする.独自に開発した脱水的アリルスルフィド合成触媒,[CpRu(η3-C3H5)(2-quinolinecarboxylato)]PF6を足がかりとして目的達成をめざした.1–0.1モル%の本触媒存在下,様々なチオールに対して1モル量のアリルアルコールを反応させれば,対応するアリルスルフィドを定量的に与える.基質一般性も高く,アルコールやアミン塩酸塩を有する二官能性チオールでは硫黄原子が選択的にアリル化される.様々な溶媒を用いることができ,水–メタノール1:1の水系溶媒でも脱水的に反応が進行する.これを基盤に,まず,最小単位であるシステインのSアリル化を検討した.システイン塩酸塩に対して,水–メタノール1:1,1モル量のアリルアルコールを作用させると,1時間で反応が完結し,目的とするS-アリルシステインを得た.pH 4.7酢酸緩衝液–メタノール1:1溶媒中でも定量的に反応が進行する.β位にメチル基やフェニル基,n-ヘキシル基,n-ウンデシル基などの置換基を導入することもできる.基質をトリペプチドであるグルタチオンとしても,同様に種々のβ位置換アリル基を導入することができた.ペプチド類に対する一般性も高い.長鎖アルキル基は脂溶性官能基であり,アリル化を鍵としたリポペプチドの化学にも新しい方法論を提示できたと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に開発したチオール類のSアリル化触媒[CpRu(η3-C3H5)(2-quinolinecarboxylato)]PF6を用いて、システインおよびシステイン含有ペプチドの選択的Sアリル化法の開発に成功した。脱水的に反応が進行するため、共生成物の分離が不要であり簡単に高極性ペプチド類を単離することができる。アリル基置換基効果を検証した結果、残念ながら天然リポペプチド骨格であるγ位二置換体には適用できないが、α位およびβ位への置換基導入が可能なため、類似構造リポペプチドへの展開が可能である。実際、小分子ではあるもののグルタチオンにおいてその合成を達成した。ペプチド、タンパク質修飾にむけた技術基盤を確立できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を基盤に、タンパク質の修飾へと展開する。系を単純化するべく、遊離SHを1つ含む牛血清アルブミン(BSA)を標準タンパク質として、アリルアルコールには、2-ウンデカニルアリルアルコールを取り上げ、本手法の有効性を検証する。MALDI-TOF MSによる分子量変化でSアリル化の成否を検証する。トリプシンやキモトリプシンにより生成物を加水分解後、HPLC分析によってシステインへのアリル基導入を確実に決定しする計画である。反応条件を最適化した後、C(2)置換アリルアルコールのBSAへの導入を検証する。無置換の単純アリル基による修飾体をもちいて、Grubbsのオレフィンメタセシス反応によりアリルオレフィン部を官能基化する手法も標的の一つとする。BSA修飾結果を受けて、より複雑なタンパク質修飾へと展開する。その一つとして、複数のSH基をもつタンパク質の位置選択的アリル化に挑戦する。標的チオール部の環境にあわせてルテニウム触媒の立体、電子的環境を整えることで選択性の獲得を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、主にNMR、質量分析装置などの共通機器類の使用料、ルテニウム触媒およびアリルアルコール類の合成原料やガラス器具などの消耗品費におおよそ半分を充てたい。また、原料となるタンパク質の調達費用、および反応分析のためのMALDI-TOF MSやHPLC/MS装置利用料も必要となる。その他、成果発表のための学会参加費、発表資料作成や論文作成資料作成のための研究経費を見込んでいる。
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Research Products
(16 results)
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[Book] e-EROS2013
Author(s)
Masato Kitamura
Total Pages
1
Publisher
Ferrocene, 1,1'-bis[(2R,4R)-2,4-diethyl-1-phosphetanyl]-, stereoisomer; Ferrocene, 1,1'-bis[(2S,4S)-2,4-diethyl-1-phosphetanyl]-, stereoisomer, RN01622
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