2012 Fiscal Year Research-status Report
カルボン酸エステルから発生する有機金属反応剤によるグリニャール型反応
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24655085
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20273477)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 求核付加 / グリニャール反応 / カルボン酸エステル / アルデヒド / 低原子価金属還元剤 / 遷移金属触媒 |
Research Abstract |
本研究では、有機ハロゲン化物の代わりにカルボン酸エステルを利用したGrignard型反応の開発を目指した。 当初、ハロゲン化アルケニルの代替としてカルボン酸アルケニルと各種アルデヒドとの反応を、ニッケル触媒やロジウム触媒の存在下、2価の塩化クロム存在下で反応を試みたが、目的とする求核付加反応はおこらなかった。特に、脂肪族のアルデヒドを基質として用いた場合、アルドール反応が優先することがわかった。さらに、塩化クロムの代わりに2価の塩化バナジウムや2価あるいは3価の塩化チタンを還元剤として同様の反応を試みたが、求核付加生成物となる第二級アルコールは全く得られなかった。 そこで、この反応での還元剤となる低原子価金属塩や金属単体と鍵中間体となるカルボキシラート配位子を持つ有機遷移金属錯体との電子移動を考え直すために、アルケニルエステルよりも酸化的付加をおこしやすいと考えられる酢酸アリルを用いて、上記のGrignard型反応を試みた。その結果、亜鉛粉末を還元剤とし、DPPF-パラジウム錯体を触媒とすることによって、酢酸アリルとベンズアルデヒドとの反応させると、目的の1-フェニル-3-ブテン-1-オールが収率22%で得られた。このことは、電子供与体からカルボキシラート配位子をもつ有機金属錯体への電子移動が可能であることを示唆している。 今後、これらの知見をさらに発展させて、有機ハロゲン化物の代わりにカルボン酸エステルを利用したGrignard型反応の実現に向けて、研究を推進する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年、申請者を初めとする複数の研究者によって、カルボン酸アルケニルの遷移金属(ニッケルやロジウム)への酸化的付加がおこりうることが報告され、その知見を基にして今回の研究課題の提案に至った。しかし、生成すると予想されたアルケニル金属カルボキシラートへの低原子価金属塩からの電子移動が思うように進行しないことが判明した。そのため、本研究を継続するために、基質をアルケニルエステルからアリルエステルし、電子移動による還元を一から見直すことを余儀なくさせられ、研究の進展が遅れることになった。 しかしながら、金属単体からカルボキシラート配位子を持つ有機金属錯体への電子移動による還元の実現に向けた糸口を見出すことができたので、平成25年度の本研究の発展が期待できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に見出された、カルボキシラート配位子をもつ(アリル)金属主の還元の実現に向けた糸口が見出されたので、その知見を出発点にして、酢酸アリルとベンズアルデヒドとの反応による1-フェニル-3-ブテン-1-オール生成反応を効率よくおこす遷移金属錯体と還元剤(金属単体や低原子価金属塩)の探索を行い、目的の化合物を高収率で得る。さらに、この反応について反応条件の最適化、基質適用範囲の拡大を行う。 このアリルエステルの反応の開発をとおして得られる還元剤からカルボキシラート配位子を持つ有機遷移金属錯体への電子移動に関する知見を基にして、当初予定していたカルボン酸アルケニルとアルデヒドとのGrignard型反応の実現を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(3 results)