2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655091
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
熊木 治郎 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (00500290)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 高分子結晶 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
高分子の結晶化については、現在でも不明な点が多い。本研究では、従来不可能であった高分子1分子の結晶化挙動を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて分子レベルで観察することに挑戦する。具体的には、我々の以前の知見を元に、高分子量体のイソタクチックポリメチルメタクリレート(it-PMMA)を低分子量で結晶化しないit-PMMAで希釈した単分子膜を水面上で圧縮して、高分子量体のit-PMMA孤立鎖が孤立鎖から結晶化する様子をAFM観察する。H24年度の検討を行い、以下の知見を得た。 (1)高分子量it-PMMA/低分子量it-PMMA(数平均分子量590)ブレンド単分子膜で、得られる結晶の量は高分子量体の含量に比例し、高分子量体だけを結晶化できることを確認した。また、高分子量体の含量を減らすに従い、結晶転移は高表面圧に移動し、得られる結晶ラメラの幅も低下し、結晶化が阻害されることがわかった。 (2)高分子量体が孤立鎖となる希薄組成では、通常の圧縮条件では結晶化しないが、水温を6℃に下げ、さらに圧縮速度を通常の1/50(0.01mm/s)にすることで、孤立鎖から結晶化することに成功した。 (3)孤立鎖からの結晶は、非晶鎖が部分的に結晶化しており、その構造の分布から、①両末端が結晶しやすく、②結晶化の進行に従い、分子鎖の中間領域も結晶化しているものと推定される。結晶のサイズは、用いた分子量(17万~140万)の範囲では、ほぼ一定で、結晶部分のサイズは分子量10~20万に相当する。分子量140万を用いると、結晶が非晶鎖で等間隔に繋がれたネックレス状の構造をとる。これらの構造は、孤立鎖が結晶化する際に生じた結晶核の構造を反映しているものと考える。 (4)超低速(0.0004mm/s)で圧縮すると、結晶化に充分な時間が確保されるため、高分子量であっても分子鎖がほぼ完全に結晶化することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高分子を孤立鎖状態で結晶化させ、その構造を分子鎖レベルでAFM観察することに初めて成功した。孤立鎖から結晶化させること、分子鎖レベルで観察すること、いずれも難度の高い挑戦的な課題であったが、それを可能とし、さらに結晶構造の分布や、結晶化速度依存性の検討に進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度の結果を踏まえて、25年度は以下の検討を行う。 〇他の結晶性ポリマーの単分子鎖結晶の検討(ポリ乳酸等) オリゴマーとの混合単分子膜を圧縮して孤立鎖からの結晶化挙動を観察するという本手法が確立できれば、結晶構造の異なる他のポリマー系にも適用可能な一般的な手法となりうる。 it-PMMAは単分子膜中で折りたたみ鎖結晶を作るが、ポリ乳酸は単分子膜中で伸び切り鎖結晶を作ることが知られている。ここでは、高分子量ポリ乳酸/低分子量ポリ乳酸の混合単分子膜を用いて、ポリ乳酸の孤立鎖からの結晶化挙動を検討する。折りたたみ鎖結晶であるit-PMMAとは全く異なる結晶化過程が予想され、折りたたみ鎖、伸び切り鎖結晶の形成過程の差に関する有用な知見が得られるものと期待される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|