2013 Fiscal Year Research-status Report
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24655095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 喜光 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00531071)
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Keywords | ホスト-ゲスト / 大環状化合物 / リン酸認識 |
Research Abstract |
生体分子の多くはイオン性のポリマーである。生体はそのポリイオンを上手に認識し生命活動を行っている。本申請研究は、多官能性大環状化合物の一次元集合体によるイオン性ポリマー認識、特にATPやDNAに代表されるポリリン酸認識に焦点を当てて研究を行っていく。ここで大環状化合物の一次元集合化によって形成されるチャネルを利用したポリマーの“長さ”認識を基本とした新しいコンセプトを提案する。これまでのアニオン認識研究の多くはアニオンを包み込むように認識しており、ポリマーの認識は困難であった。これに対し本研究では、イオン性ポリマーを“貫通”させて認識する“三次元認識”という新しいコンセプトを提示しこれまでのイオン認識研究とは一線を画した研究を開拓していく。 前年度まではモノマーであるリン酸と大環状化合物の相互作用について検討を行い、溶液中及びバルク状態において大環状化合物の一次元集合化に伴うリン酸の包接挙動が確認された。今年度は当初の目的であったリン酸のポリマーの認識挙動について検討を行った。リン酸ポリマーはリン酸の環状エステルの開環重合によって合成した。溶液中で大環状化合物と混合したところ、NMRスペクトル上で包接体を示唆するピークシフトが観測された。また、滴定実験を行ったところ、包接体における大環状化合物とポリマー中のリン酸ユニットの数はほぼ同じであったことから、リン酸ポリマーの一つひとつのリン酸ユニットに対して大環状化合物が相互作用していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年はリン酸ポリマーの認識という当初の計画を実行した。当初の計画では大環状化合物の環サイズを変更する必要があると考えていたが、はじめに用いた大環状化合物でリン酸ポリマーの認識が行われたことから、予想以上に順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
溶液中でのリン酸ポリマーの包接挙動が観測されたが、大環状化合物がどのようにリン酸ポリマーを認識しているのかは不明である。コントロール化合物を合成し、それらの挙動と比較することによって包接化合物の実体を解明し、より効率的なリン酸認識ゲストの開発につなげていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リン酸ポリマーを認識するところまでは順調に研究が進んだが、その後の包接体の解析が複雑で困難であった。結果として包接体のみでは解析が出来なかった。そのために新たにコントロール化合物を合成する必要が生じ、次年度まで研究期間を延ばすこととなった。 有機合成の為の試薬購入、学会発表の出張費として使用予定である。
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