2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 慎庫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90508194)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 芳香族モノマー / 配位重合 / 芳香族高分子 |
Research Abstract |
本研究では,配位重合の概念を芳香族高分子の合成にまで拡張し,既存の方法では得られない新規高分子材料の創製を行うことを目的とする.具体的には,アラインの合成等価体である「芳香族モノマー」を配位(共)重合させることにより様々な芳香族高分子の合成を行う.2年の研究期間で3種類の新規高分子の合成を提案したが,平成24年度はその中の2種類,すなわち,ポリ(オルト-アリーレン)および芳香族ポリケトンの合成を行った. (1) 芳香族モノマーの単独重合によるポリアリーレンの合成:ナフタリン等価体である芳香族モノマーを遷移金属触媒により配位重合することで,ポリ(ナフタレン-2,3-ジイル)を合成した.本重合反応は反応条件の選択が副反応の抑制のために重要になるが,触媒・配位子・反応温度を精査することで高い収率および重合度で目的の芳香族高分子を得る条件を見出した.現在知られている中で最長のポリ(オルト-アリーレン)の合成に成功したといえる成果である.また,同反応条件を他の芳香族モノマーに用いて,様々なポリ(オルト-アリーレン)を合成している. (2) 芳香族モノマーと一酸化炭素との共重合による芳香族ポリケトンの合成:ナフタリン等価体である芳香族モノマーと一酸化炭素とを,遷移金属触媒を用いて共重合させることにより芳香族ポリケトンの合成に成功した.本共重合体はオルト-アリーレン基とカルボニル基が完全交互に配列した前例のないポリマーである.また,得られたポリケトンに酸触媒を作用させてケトン部位を分子内環化させ,ポリアセタールへと変換した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述のように,本研究では2年の研究期間で3種類の新規高分子の合成を提案したが,平成24年度はその中の2種類―ポリ(オルト-アリーレン)および芳香族ポリケトン―の合成に成功した.これらの高分子に関しては,合成できるか否かが最大の挑戦的課題であると研究計画の時点で予想していたため,期待通りであり同時に期待以上ともいえる進捗であった.これらの合成に関しては,現在論文を投稿準備中である.今後は残る一つの課題であるグラフェンナノリボンの選択的合成へと発展させ,また,同時にポリマーの物性探索とデバイス開発を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画書に記した残りの部分を進める予定である.具体的には以下になる. (1) ポリアリーレンの酸化によるグラフェンナノリボンの合成:平成24年度の研究成果で得られたポリ(ナフタレン-2,3-ジイル)を脱水素酸化することでナフタレン環同士をつなげ,グラフェンナノリボンへと誘導化する.これによりベンゼン環が四つずつ連結しアームチェア型GNRが合成できる.具体的には化学酸化剤を用いる均一系の反応条件,および金属基板上での酸化反応を試みる.合成に成功すれば,ポリ(アントラセン-2,3-ジイル)などπ拡張分子にも応用し,より幅の広いグラフェンナノリボンを合成する. (2) 得られた新規共役高分子の物理的および化学的物性評価:本研究で得られた化合物に対して物性の評価を行い,デバイスの開発へとつなげる.ポリアリーレンおよびグラフェンナノリボンは共役が広がった構造を有するため,高い電気伝導性の発現が期待できる.溶液塗布法を用いて有機半導体デバイスを作製して評価を行う.また,ポリアリーレンの場合はキラリティに由来する性質が期待できるので,不斉合成の後に円偏光二色性スペクトルや円偏光発光などの分光測定を行い,光学材料特性を評価する.芳香族ポリケトンおよびポリアセタールに関しては,様々なイオンをドープしてイオン伝導度の測定を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は予算執行の都合で12,450円が次年度へと繰り越しになったが、これは次年度に請求する研究費と合わせて使用する.次年度は50万円以上の大型物品を購入する計画はなく、特に試薬やガラス器具など消耗品の購入や国内外で研究成果を発表する際の旅費などにあてる予定である.
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