2013 Fiscal Year Research-status Report
イタコン酸の不斉環化反応による高性能ポリアミドの合成
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24655099
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
金子 達雄 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (20292047)
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Keywords | 高分子合成 / ナイロン / 光学活性 / イタコン酸 |
Research Abstract |
イタコン酸からビニル系ポリマーが得られる事は古くから報告されている。しかし、エンプラ開発の観点に基づいた研究はなく、そもそも反応性の高い二重結合を持つモノマーは取り扱いが難しいためビニルモノマーとしての利用以外では困難と考えられてきた。そ の中で、イタコン酸のユニークな構造的特徴に着眼し、あえて合成の難しい不斉中心を持つ新規ポリアミドのために活用しようとする試みを行った。 平成24年度までに作成したイタコン酸とアミノ酸からの非対称二カルボン酸モノマーがジアステレオマーとなっている可能性から、これらを分離する試みを行ったが現在の所分離は成功していない。しかし、バリン、ロイシンなどの光学活性なアミノ酸においてLにおいてもDにおいても非対称二カルボン酸モノマーが合成できることを見出した。かつこれらのモノマーが各種脂肪族ジアミンとで反応しポリアミドを生成することが分かった。その重量平均分子量は最大で62500まで伸びた。これらのポリアミドはX線回折イメージングとスキャンにより、結晶性であることが判明した。一方、若干脆いことも分かった。そこで、ナノ鉱物であるモンモリロナイトとのナノハイブリッド化を行った。その結果、界面活性剤でコートされたモンモリロナイトよりも、そのNa塩の状態においてハイブリッドした際により効率よく補強され、ヤング率・破断強度・破断伸びのいずれにおいても優れた繊維が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに作成したイタコン酸とアミノ酸からの非対称二カルボン酸モノマーがジアステレオマーとなっている可能性から、これらを分離する試みを、クロマトグラフィーおよびNMR法により行ったが、二種類の物質の混合体であることを確認することが出来なかった。これは、確認条件を見いだせていないか、本当に一種類の光学活性な物質が出来ているかのどちらかである。今後、キラル試薬などを用いて明確にする予定である。一方、バリン、ロイシンなどの光学活性なアミノ酸においてLにおいてもDにおいても非対称二カルボン酸モノマーが合成できることを見出した。かつこれらのモノマーが各種脂肪族ジアミンとで反応しポリアミドを生成することが分かった。その数平均分子量は18700-26000であり重量平均分子量は41800-62500であったため十分に高分子量となっていることが分かった。また、これらのポリアミドはX線回折イメージングとスキャンにより、結晶性であることが判明した。一方、そのためか若干脆いことが分かった。そこで、ナノ鉱物であるモンモリロナイトとのナノハイブリッド化を行った。方法としては、ある程度重合を進め粘性が上がった状態で、モンモリロナイトを混合しその後、重合を進めると共にナノハイブリッド化した。その結果、補強がうまく進み、より強く長い繊維が出来ることが分かった。以上により、計画と全く同じ方法論で進める状況とはならなかったが、目的に向かって順調に進んでいると考え、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度はこれまでの成果を元に、異なる対称性のアミノ酸を用いて得られたポリマーとこれらのアミノ酸を混合してステレオコンプレックスを形成して得たポリマーに関し、それぞれの繊維の力学強度やガラス転移温度などを調べ、光学活性と繊維などの材料の熱力学特性に及ぼす効果をしらべる。かつモンモリロナイトの表面を界面活性剤でコーティングしたものを用い、ポリアミド/モンモリロナイト相互作用を強めることで界面活性剤の構造と繊維の物性に与える効果を明確にする。以上の計画の上で、最終的に応用可能なレベルの繊維を作成する。また、今回未使用額が若干生じたがこれは当初よりもスムーズに研究を進めることができたためであり、その分、来年度はポリアミドの構造に多様性を与え、構造と物性との相関をより明確にし、さらに充実した結果を得る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額が生じたがそれは当初の予想よりもスムーズに研究を進めることができたためであり、その分、より多様な種々のサンプルを作成し、さらに充実した構造物性相関解析を進める予定である。 消耗品をメインとする予算立てを行っており、モノマーおよびポリマー合成、複合体作成のための、試薬、溶媒、ガラス器具、溶媒などを購入し合成を行う。さらに、ポリマーの構造解析、分析を行うために、NMRセルなどの分析セルや測定治具などを購入し、性能と物性評価試験に重点を置く。また、旅費に関しては常に各学会に於ける情報・資料収集、調査研究、成果報告を行い、さらなる研究発展につながると考えられる研究者と積極的に打ち合わせを行う。また、大学院生に役割分担が与えられるため、学生の謝金にも使用する。その他に関しては、積極的に論文報告を行うために使用したい。また、特に大きな割合を占める経費はない。
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