2012 Fiscal Year Research-status Report
透過型電子顕微鏡観察のための新しい染色法の開発とその有用性の実証
Project/Area Number |
24655101
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
英 謙二 信州大学, 総合工学系研究科, 教授 (60126696)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / 染色法 / ポリジメチルシロキサン / チタン含有ポリマー |
Research Abstract |
透過型電子顕微鏡観察では、電子を散乱させる重原子が染色剤として有効とされる。現在主流の方法は酸化オスミウム(VIII)を使う方法である。しかし、酸化オスミウム(VIII)は高価であり、毒性が強く(毒物扱い)昇華性のため、その使用はドラフト内で厳重な管理の下で行なっている。 本研究は、原子番号14のSiや原子番号22のTiのような軽原子でも多数集まれば電子を散乱するという斬新なアイディアに基づくものである。本研究の染色剤として安価に市販されているポリシロキサンを選んだ。構造や官能基、分子量の異なるSi化合物を用いた染色とTEM観察による染色効果の比較した。TEM観察の対象となる会合体として、ゲル化剤と増粘剤に焦点を当てた。官能基の異なるポリシロキサンを使用し、様々な溶媒中で染色を行い、試料のTEM観察を行った。染色効果の違いを比較し最適なポリシロキサンと溶媒の組み合わせについて検討した。また分子量や構造の異なるポリシロキサン(ケイ素化合物)によって染色を行い、これら試料のTEM観察を行った。 Si(原子番号14)と比べ原子番号22のTiはより効果的に電子を散乱すると考えられる。そこでTi原子を含むポリマーを購入し染色効果を評価した。申請者がSiやTiに拘る理由は両元素の安全性にある。両元素は日焼け止めクリームや美白化粧品にしばしば使われるように人体への安全性が高いからである。Ti含有オリゴマー、ポリマーの合成は文献に従い実施した。チタニウムイソプロポキシドTi(Oi-Pro)4のゾル・ゲル重合により-Ti-O-Ti-型のポリマーを合成した。また、チタニウムイソプロポキシドTi(Oi-Pro)4とテトラメトキシシランSi(OCH3)4とのゾル・ゲル共重合により、酸化チタン含有シリコーンポリマーを合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造や官能基、分子量の異なるSi化合物を用いた染色とTEM観察による染色効果の比較した。官能基の異なるポリシロキサンを使用し、様々な溶媒中で染色を行い、試料のTEM観察を行った。染色効果の違いを比較し最適なポリシロキサンと溶媒の組み合わせについて検討した。また分子量や構造の異なるポリシロキサンによって染色を行い、これら試料のTEM観察を行った。その結果、染色剤として安価に市販されているポリシロキサンの中に染色剤として有用な化合物を選出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Ti含有ポリマーによる染色効果の評価 前年度に引き続きポリシロキサンによる染色効果を調べ、本研究課題で提案する新染色法の有用性を実証するべく、データを増やす。また、平成25年度はTi含有ポリマーを合成するとともに、それらによる染色に焦点を移し、Si-ポリマーとTi-ポリマーの染色効果を比較し、どちらが優れているかという結論を出したい。 2)他の顕微鏡による形態観察との比較 Si化合物によって染色した試料について走査型顕微鏡観察(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、共焦点走査型レーザー顕微鏡(CLSM)を用いて観察を行う。この形態観察から染色機構を検討する。またSEM観察やTEM観察を行う際、エネルギー分散型蛍光X線分光法(EDX)を用いて、元素分析または元素マッピングを行ってSiやTi原子の濃縮位置を特定し染色機構を明白にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究が幾分順調に進行し、若干の次年度使用額が発生した。平成25年度は高額の各種ジメチルシロキサンの購入やTi含有ポリマー合成のための原料モノマーの購入を予定しており、昨年に発生した次年度繰越金と本年度の申請助成金は研究試薬購入に使用する。また、TEM観察の対象となるベシクルや二分子膜を形成する物質の購入にも充てることになっている。
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