2014 Fiscal Year Research-status Report
繊維集合体における隙間のないユニークなパッキング構造化の研究
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24655105
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
大崎 茂芳 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (90273911)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クモの糸 / 繊維集合体 / 力学特性 / 隙間 / 電子顕微鏡 / 軽減化 / 圧力 / 変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
クモの糸は柔軟性と強度を共に備えているという特徴から、近年、繊維の新素材としてとみに注目を集めるようになってきた。今のところ、クモは共食いのため、糸の大量生産には向いていない。しかし、将来において遺伝子工学などの手段を用いて、クモの糸の大量生産が可能になると、実用的にもクモの糸の繊維集合体の性質が重要になる。そのため、天然のクモの糸の集合体で、その力学特性をあらかじめ調べておいて、実用化に向けて待機しておく必要がある。 本年度はジョロウグモの単繊維において、その繊維軸方向の弾性率と、それに垂直な方向における圧縮弾性率を測定した。従来から軸方向の弾性率測定がほとんどであったが、軸方向に垂直な圧縮弾性率の測定は珍しいものであった。二方向での弾性率の値に基づいて加圧の方法や、湿度の条件を探ってみたところ、得られた弾性率の大きさによって変形のしやすさが理解できるようになってきた。その結果、湿度の環境下においては、特に収縮と変形の兼ね合いが問題になってくることが分かってきた。実験結果に基づいて、クモの糸の繊維集合体の隙間の軽減化のメカニズムが議論できるレベルになってきた。また、太さの異なるクモの糸のフィラメントを用いた実験でも、繊維間の隙間をなくするメカニズムの裏付けするヒントを得ることができるようになってきた。 26年度に集めたクモの糸は少しばかり少なかったため、27年度にもクモを採集して、糸を取り出すために期間の延長をお願いした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調で興味深いデータも得られている。繊維軸方向とそれに垂直方向の圧縮弾性率が分かりかけてきたので、初期の目標に向けてかなり進展している。しかし、生きたクモの採集は天候に左右されがちであり、しかもクモから糸を集めることにおいてはクモとのコミュニケーションが必要なために少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
もう少しクモを捕獲して、それらの牽引糸を採取することに集中したい。そして、それらの繊維集合体から紐を作る過程で、隙間の軽減化のためのメカニズムを明らかにするデータを取ることを目的とする。具体的には、隙間の割合を電子顕微鏡で調べるとともに、繊維集合体への加圧条件との関係を調べたい。
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Causes of Carryover |
クモは生き物であるために、天候に依存して、しかも生存期間が短く糸取りの旬というものが短い。そのため、クモの採集とクモの糸を取り出す作業がうまくいかず、年度を越して採集と糸取りを行って、初期の目的を達成したいため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、クモを屋外で採集するための費用およびクモから糸を採取するための人件費に充てたい。
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