2012 Fiscal Year Research-status Report
テルル特有化学反応を利用した含テルルポリマーの合成と性質
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24655106
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
工藤 宏人 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (30343635)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 重縮合 / ポリマー / テルル / 高屈折率 |
Research Abstract |
種々の芳香族化合物類と四塩化テルルとの重縮合反応により、含テルルポリマーの合成を検討した。芳香族化合物類として、トリフェニルメタン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニルを用いて、溶媒、反応温度、触媒等の反応条件を様々に組み合わせて検討した。その結果、塩化アルミニウムが触媒として作用することが判明した。 種々の溶媒(クロロホルム、クロロベンゼン、ニトロメタン)を、触媒存在下、種々の芳香族化合物類と四塩化テルルとの縮合反応を検討した結果、モノマーとしてトリフェニルメタン、溶媒としてクロロホルムを用いた場合、数平均分子量(Mn)=2,070、分子量分布(Mw/ Mn ) = 1.74のポリマーが収率52%で得られることが判明した。 得られたポリマーの構造解析を、IRスペクトル、1HNMRスペクトルにより行い、主鎖にテルル元素を有するポリマーであることが判明した。このことは、ベンゼン環部位と四塩化テルルの縮合反応が進行したことが示唆された。さらに、この縮合反応において、仕込み比、四塩化テルル / トリフェニルメタン = 1/2 の場合、得られたポリマーの分子量が最も大きく、Mn= 6,860、Mw/ Mn = 4.15の対応するポリマーが収率52%で得られた。このことは、多分岐骨格部位より、直鎖状部位が主骨格であることが示唆された。 さらに合成した含テルルポリマーの物理特性を調査した結果、優れた溶解性、成膜性および耐熱性を有することが分かった。特に、400℃以上でも安定であることが判明した。さらには、調整した薄膜の屈折率をエリプソメーターにより測定した結果、1.68の高屈折率特性を有することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規含テルルポリマーの合成に成功し、その物理的特性を明らかにすることに成功した。様々な重合条件および、芳香族系モノマーを検討することで、現在のところ、トリフェニルメタンと四塩化テルルとの重縮合反応が、塩化アルミニウムを触媒として用いることで進行することを見出すことに成功している。一方、他の芳香族類(ジフェニルスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニル)では、ポリマーを得ることが出来なかった。このことは、芳香族化合物とテルル元素との組み合わせに起因していることが示唆され、構造によっては、主鎖にテルル元素を安定に有するポリマーが合成可能であることを証明することに成功し、当初の研究目的である、含テルルポリマーの合成法を見出すことに成功した。 さらに、合成に成功したポリマーは、溶解性、成膜性、耐熱性に優れ、高屈折率特性を有することを明らかにした。このことは、当初、含テルルポリマーは合成が達成されても不安定であり、機能性材料として応用不可能である場合も予想されたが、その予想とは反し、合成に成功した含テルルポリマーは光機能性材料として応用可能であることを証明した。 以上のことより、本申請課題は概ね順調に展開していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度まで、トリフェニルメタンと四塩化テルルの重縮合反応は、塩化アルミニウムを触媒として進行することを明らかとした。この重合反応により合成される含テルルポリマーにおいて、テルル元素部位を安定化させる骨格が必要であることが示唆された。この重合反応を基本的反応条件として、四臭化テルルと四ヨウ化テルルにおいて検討する。さらに、芳香族系モノマーとして、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィドを用いて検討する。四臭化テルルと四ヨウ化テルルを用いて合成されたポリマー類の耐熱性、成膜性、および屈折率特性を検討する。 以上の方法により、ハロゲン化テルル化合物流と芳香族類との重縮合反応システムの確立を達成させ、新規含テルルポリマーの合成法として確立させ、さらに、新規光機能性材料への応用展開を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度まで、含テルルポリマーの合成に関する研究として優れた研究成果を得ることができたと考えているが、それらの研究成果の発表は未だ全く行っていない。このことは、研究データーの再現性など、正確性を重要視することに徹したためである。その結果、当初予定していた学会発表費用を前年度は使用しなかったため、繰越し金が生じることになった。 今年度は、昨年度までに達成した優れた研究成果を広く公表し、また、研究討論を行うことを目的として、国内および海外の学術会議に参加する出張費用として使用する予定である。
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