2013 Fiscal Year Research-status Report
アスベストの無害化・有効利用法:シリコーンポリマーへの構造制御変換法の開発
Project/Area Number |
24655107
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
幅上 茂樹 中部大学, 工学部, 教授 (30252266)
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Keywords | シリコーンポリマー / シラノール基 / テンプレート / シリカ / 機能性材料 |
Research Abstract |
アスベストの無害化・有効利用法として、シリコーンポリマーへの変換法について、生成ポリマーのより高度な制御を達成することを目的として検討を行っている。本年度は(1)シリカの分解とシラノール基の縮合反応によるポリマー骨格形成段階の制御の可能性、(2)反応性シラノール残基を有する新規シリコーンポリマーの構築と応用、の2点について検討を行った。 (1)前年度、酸による中和過程について、例えばポリエチレングリコールを共存させて反応を行うことにより、著しいポリマー収量の向上と分子量の増大が観察されたため、テンプレート分子の添加がある程度、効果的であることが明らかとなった。そこで、様々な水溶性高分子の添加効果や水溶性高分子の分子量が生成ポリマーの構造に及ぼす影響について検討を行なった。しかし現在までのところ、生成ポリマーの分子量制御などのより高度な構造制御までには至っておらず、ある程度制御は可能であると考えられるものの、高い反応性を有するシラノール基の反応制御は非常に困難な状況である。 (2)一方、逆にこの高い反応性を活かしたポリマー設計・制御による新しいシリコーンポリマーの開発は、ユニークである。シラノール基を有するポリマーや、そのシラノール残基をシリル化剤を用いてある程度反応性を制御したシリコーンポリマーを構築し、それらの機能について検討を行なった。具体的には、ポリウレタン膜の性能制御をする機能性添加剤、あるいは接着剤における機能性接着付与剤としての効果について検討した。その結果、膜の弾性率制御や接着効果速度などにある程度効果があることが明らかとなった。シラノール残基の残存量と、導入するシリル化剤の構造が、いずれの場合においても影響を与えることから、それらのより高度な設計により、より効果的な機能性材料しての応用が可能になるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度、「やや遅れている」と評価したが、この点は本年度についても大きく影響を与えている。平成25年度以降については、デザイン型テンプレート分子の導入による高度な縮合反応制御を実施する計画であったが、テンプレート分子のある程度の効果は明らかになったものの、思うような高度な制御は達成できておらず、予定通りの達成度とは言えない。一方で、生成ポリマーの新たな視点での構造制御が大きく進展し、これは同時に機能性高分子としての応用の可能性を切り開くものであるため、有意義な成果である。当初の計画とは異なるが、新規な構造制御法の構築という、本研究の主旨にもよく合致する。また、前年度の報告書内、今後の推進方策でも指摘している点でもある。加えて、シラノール残基を有するシリコーンポリマーが得られるという点は、本研究のシリカのシリコーンポリマーへの変換法の大きな特徴の一つであり、これを活かした新規なポリマー構築法でもある。上述のように制御が困難なシラノール残基の縮合反応を逆に活かした機能性ポリマーの構築により、膜添加剤や接着付与剤としての応用の可能性が示されたことは、非常に大きな進展である。これらを勘案すると、全体としては「やや遅れている」という評価に変化はないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの研究により明らかになったシラノール残基を有する新規なシリコーンポリマーの開発を中心に、シリコーンポリマーの縮合反応制御による構造制御法の開発についての検討も同時並行に進める。まずは、これまで用いてきた水溶性高分子テンプレートに替えて、まずは低分子テンプレートに絞って検討を行なう。これは、高分子の場合、選択範囲が狭いことと、分子量などの複合的な効果が、結果を雑化させてしまうためである。様々な水溶性低分子を用い、官能基やその濃度、反応温度などの条件が、中和・シラノール基の縮合過程においてどのように影響を及ぼすかを検討する。これにより、テンプレートの機能・制御メカニズムを明らかにすることができれば、高分子も含めて、より効果的なテンプレートの構造設計が可能となる。 一方、シラノール残基を有する、従来にはないユニークな構造を有しているポリマーをある程度、制御して構築することが可能となった。上述のように、シラノール残基の残存量と、導入するシリル化剤の構造が、その応用において影響を与えることから、これらをデザインすることによるポリマーの構築と、その応用として、より高度なポリウレタン膜の性能制御をする機能性添加剤、あるいは接着剤における機能性接着付与剤としての機能評価を行う。 以上により、本研究の大きな目的であるシリカのシリコーンポリマーへの変換法の有用性を高め、アスベスト無害化・有効利用法としての価値を高めるべく検討を行なう。
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