2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655114
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80198374)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | テルピリジン / ジピリドアクリジン / 白金錯体 / 超分子 / ホスト-ゲスト |
Research Abstract |
テルピリジンおよび、より広いπ平面をもつジピリドアクリジン誘導体の白金錯体を合成し、置換不活性なチオラト錯体へと変換した。構造はNMR、元素分析、ESIMSなどから同定した。次にこれらの錯体と大きなπ平面を持つコロネンをグラフェンのモデル化合物として用いて、これらの相互作用についてNMRによって調べたところ、溶液中で比較的強い相互作用を示すことがわかった。特に、ジピリドアクリジンではより強い会合力を示し、これが大きなπ平面と相互作用させるのに適した骨格であることが明らかとなった。会合定数はこのような平面性分子と芳香族化合物との相互作用としてはかなり大きなものであった。また矩形構造のホストで、同様なジピリドアクリジン部位を二つもつ分子の合成にも成功した。この分子は大環状効果により、上述した相当する単量体と比べて4~5倍の会合定数をコロネンに対して示した。一方、π平面がより狭いピレンやナフタレンでは会合定数は激減した。つまりπ平面があるサイズ以上に大きくなると急激に相互作用が増大することがわかった。 拡張したπ平面部位をもつサロフ化合物についても特にチオフェンを導入したトリサロフ誘導体、およびモノサロフ誘導体を合成し、トリサロフ亜鉛-ランタン錯体とモノサロフ亜鉛錯体を合成した。モノサロフ体の錯体ではX線結晶構造解析によりその構造を明らかにした。またフェニル基を導入したモノサロフおよびトリサロフのニッケル錯体、パラジウム錯体、白金錯体の合成についても検討し、ESIMSや元素分析からその構造を同定した。興味深いことにモノ体のパラジウム錯体は反磁性であるが、トリサロフ体の場合はESRを測定することができ、ラジカル種の生成が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したリガンドのテルピリジン誘導体および、より広いπ平面をもつジピリドアクリジン誘導体の合成ルートを確立し、そのチオラト配位子をもつ白金錯体の合成も良好な収率で行うことができた。NMRによる検討からコロネンとの相互作用がこれまでの知見から予想していたものよりもかなり大きく、グラフェンやグラファイト表面への吸着分子として十分な可能性を有することを明らかにできた。また矩形ホストの合成は、まずこの分子の前駆体となる配位子の合成に時間を費やしたが、チオラートの発生法を各種検討することにより目的の矩形ホストを合成することができた。こうして得られたホストがコロネンに対して高い親和力を示したのは、今後のグラフェン認識ホストを合成する上で非常に有益な知見となると考えられる。以上の理由から24年度は概ね順調な達成度であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
いくつかの目的の化合物の合成に成功したが、それらのホスト分子としての挙動がまだ十分に明らかにされていない。そこでいくつかの他のゲスト分子との相互作用を吸収スペクトルや、可能であれば、X線結晶構造解析によって明らかにするとともに、計算化学も併用してその相互作用の本質を明らかにしていく。また目的のグラフェンやグラファイトなどの無限π平面に対する吸着挙動についても電子顕微鏡による検討を行い、本研究の目的の達成を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(60 results)