2012 Fiscal Year Research-status Report
高度撥水表面上での水蒸気凝結ダイナミックスと濡れ性の逆転移
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24655117
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 章 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00302795)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 濡れ / 撥水 |
Research Abstract |
平成24年度は様々な方法で高度撥水表面を作製し、それを冷却して表面に水が凝縮する過程の詳細観察により、凝縮の起こり易さ、凝縮が起こりやすい部位等を把握することに努めた。ランダムな構造の粗さ(Ra=46 nm程度)を持つ表面をベーマイト(AlOOH)ナノ粒子を用いて作製し、各種撥水性シランを化学蒸着法(CVD法)によりコーティングして超撥水性表面を作製した。この試料をペルチェ素子により冷却し、Top およびSideの2方向から高速度カメラを用いて水滴の撮影を行った。 その結果、表面が露点以下に冷却されると結露が進行し、水滴の自発跳躍現象が観察された。2.5 msまでのTop viewとSide viewの観察から、大きな二つの液滴が合体、変形し、形状回復した後、自発跳躍が生じていることが判った。 液滴同士の合体について、基板の表面粗さを考慮した界面エネルギーの理論計算を行ったところ、超撥水表面への結露の進行とともに、複数の水滴が合体して一つの液滴になる時の界面減少に伴う安定化エネルギーが水滴の自発跳躍の運動エネルギーに変換され、自発跳躍が生じることが分かった。さらに、理論計算結果から、合体する二つの液滴の径の差が大きくなるほど跳躍速度は減少し、その差が大き過ぎると跳躍しないことが示唆され、理論跳躍速度とともに測定結果とほぼ一致した。これらのことから、跳躍液滴の液滴径が同じでも合体する前の液滴の大きさの組み合わせに依存して跳躍速度、ひいては跳躍頻度、高さが変化することを示唆された。これは現実の系において跳躍液滴径が同じでも跳躍高さに個体差があること等への説明になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた規則構造の作製方法は様々な検討の結果、当初の反応性イオンエッチングからポリマーのリソグラフィに変更したが、それ以外については交付申請書に記載した内容をほぼ順調に消化できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
濡れ性の逆転移は、水平表面より傾斜表面で特に頻繁に観察される。このため液滴転落挙動解析システムに作製した高度撥水表面をセットし、試料ステージにペルチェ素子を取りつけて冷却を行いつつ、水蒸気の凝縮と転落の関係を高速度カメラにて観察、記録する。この際、撮影視野内での濡れ性逆転移の発生頻度も記録する。場所と傾斜角度を変えて測定を行い、傾向を統計的に把握する。本測定に関しては、必要に応じて、湿度制御を行いながら実施する。得られた一連の検討をもとに、ランダムな粗さを持つ表面について、水蒸気の凝縮によりWenzelモードからCassieモードへの濡れ性の逆転移が起こる機構とその現象を支配する材料因子の効果を解析する。 またロッド型の規則構造を想定し、凝結過程の様子を詳細に観察し、CassieモードとWenzelモードの安定性について検討する。エネルギー計算を行い、実際に得られた規則構造の結果と比較を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)