2013 Fiscal Year Research-status Report
白金とは異なる酸素還元経路をもつ燃料電池用金属ポルフィリンネットワーク触媒の開発
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24655119
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山口 孝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90272947)
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Keywords | 燃料電池 / 酸素還元 / 電極触媒 |
Research Abstract |
固体高分子型燃料電池白金代替酸素極を念頭に、申請者等の開発した熱処理鉄ポルフィリンにおいて、白金系とは異なる新規酸素還元機構の証明、酸性下での長期動作安定性を明らかにすることを目的とした。 平成25年度は初年度に引き続き、コバルトポルフィリンのバリウム架橋における優位性、及び4つの末端基をカルボン酸とした鉄ポルフィリンを用いた場合のバリウム架橋の有無による効果に加え、熱処理による活性向上について検討した。酸素還元能はスルホ基を有する鉄ポルフィリンをバリウム架橋したものが最も優れていたが、本年度は以下の知見を得た。 カルボン酸を末端に有する鉄ポルフィリンではスルホン酸の場合と同様、バリウム塩添加による沈殿生成が確認できたが、コバルトポルフィリンではバリウム塩を加えても沈殿せず、電子顕微鏡においても鉄ポルフィリンの時に現れる小枝状形状を観察することが出来なかった。これら修飾電極の酸素の有無による自然電位を追跡したが、鉄ポルフィリンとコバルトポルフィリンではその時間経過に伴う変動が異なることを明らかとした。この要因はダイマー構造を形成していないコバルトポルフィリンでは中心金属のコバルトは酸素分子との配位力が強いため、溶存酸素分子の速やかな吸着が起こり、酸素存在下での自然電位の急激な上昇を引き起こしていると考えることを示した。また、この結果はコバルトポルフィリンによる酸素の2電子還元を示すことにもなるが、過酸化水素の酸化、還元分解を測定したところ、鉄ポルフィリンよりも優れた分解挙動を示したことから、コバルトポルフィリンにおいても酸素分子は最終的な水への4電子還元を達成することを示した。この成果を元に二つの酸素還元機構を検討しているが、鉄ポルフィリン自身の酸化還元波が酸素還元波と同様にpH依存していることから、最終年度の新たな酸素還元機構の提唱への重要な要因と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度計画は、分光学的評価から本触媒の酸素吸着による高酸化状態への移行を明らかにすることを第一目的としたが、4つのカルボン酸を持つ鉄ポルフィリンの合成に手間取り、バリウムイオンとのイオン架橋構造によるネットワーク構築の支持と熱処理の優位性までしか見いだせていない。しかし、ポルフィリン末端基、ポルフィリン中心金属の変化による比較から、メディエータ型酸素還元反応の反応機構が中心金属あるいはダイマー構造の形成の有無により二種存在することを見いだした。また、中心金属自身の高酸化状態が単純な系でなく、pH依存している点を電気化学的に明らかにしている点は最終年度の本研究の重要なカギを握る。一方で、本触媒を利用した酸素還元反応電子数評価は不十分である。また、金属ポルフィリンの耐酸性・安定性の評価は未実施であった。以上のことから、当初の計画から遅れているものの、実際当初計画にはない重要な成果が得られつつあることから、自己評価はやや遅れているとの評価が妥当と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進行状態から、最終年度は耐酸性、安定性を酸素還元能の経時変化から電気化学的に評価するだけでなく、分光学的に評価することを第一目的とする。本触媒の吸収スペクトルの直接測定は困難であると考えていたが、カルボン酸を有する鉄ポルフィリンを用意できたことは未熱処理状態であれば酸性溶液で不溶であり、炭化(煤)による分光学的障害を考慮しなくて良いことになる。従って、酸性水溶液下で長期にさらした後、塩基性溶液でその触媒を溶解し、吸収スペクトル変化を追うことでバリウムイオン架橋による耐酸性、耐久性の向上を検討することで達成する。二点目は、集電剤となる炭素微粒子への担持方法の検討に取り掛かる。特に本触媒の耐酸性、安定性評価を行い、バリウムイオン架橋による効果を明らかにするために、平成24年度実施の水晶振動子マイクロバランス法が利用できるため、酸性溶液下での触媒の質量変化を測定することで評価に結びつけることを計画している。以上の計画により白金とは異なる新たな酸素還元経路を示すことを達成し、本触媒の応用的な展開の可能性を示すこととする。
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