2013 Fiscal Year Research-status Report
希少金属を含まずに室温でリン光を発する有機分子の創製
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24655122
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10272709)
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Keywords | リン光 / 発光材料 |
Research Abstract |
イリジウムなどの希少金属を含まない有機分子から室温リン光を実現することを目的として、昨年度合成した2,5-ジブロモ-1,4-ジアロイルベンゼンの物性評価を行った。その結果、アロイル基が4-トリフルオロメチルフェニル基である誘導体の結晶が、発光極大波長448 nm、発光量子収率0.18で青色発光することを明らかにした。発光寿命測定の結果から、この青色発光は発光寿命が88.7 マイクロ秒および417マイクロ秒である2種類の発光成分からなることがわかり、またその寿命の長さ、発色団の有効共役長と報告されている類縁化合物の発光特性との比較により、この長寿命発光はリン光であると帰属した。同様に、アロイル基が3-チエニル基である誘導体の結晶では、発光極大波長が498 nm、発光効率0.14という青緑色発光を観測することができた。さらに、アロイル基を4-メトキシフェニル基にすると、その発光色は緑色(発光極大波長530 nm、発光効率0.05)にまで長波長シフトすることも明らかにした。いずれも、ミリ秒という大変長い寿命を有する発光であることを寿命測定から確かめた。それぞれの単結晶のエックス構造解析を行ったところ、いずれもパイーパイスタッキングのような芳香環どうしの重なり合う形式のパッキングはとっていないことがわかった。また、アロイル基がフェニル基である分子の単結晶では、臭素と隣接分子のカルボニル基とのハロゲン結合の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室温で可視光のリン光発光を実現する金属を含まない有機分子をいくつか創製することに成功したので、本研究の目的に照らして概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究視点として、ハロゲン効果の調査、ハロゲンとアロイル基の位置関係の精査、設計発色団とハロゲン結合や水素結合可能な二官能性分子を設計分子と混合して、共結晶の作成に取り組み、より高効率のリン光発光の実現を目指す。また、低温測定によるリン光特性のデータ増強にも取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、研究初年度に所属機関の異動に伴って研究活動の小規模な遅延が発生したことに由来する(2年目である昨年度は実支出額がおおよそ計画通りとなっている)。 次年度使用に相当する助成金は、今年度大いに注力する予定である発光特性の低温測定にかかる分光器オプションや消耗品などの購入に充当し、本研究の目的達成のために最大限有効活用する予定である。
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Research Products
(1 results)